5-40【無限と叡智1】+用語11



無限むげん叡智えいち1◇


 女子のぽわぽわっとした雰囲気ふんいきから脱した俺は、一人で寮に戻って来た……そして一人でさみしく胡坐あぐらをかき、床に置いたガントレットを見る。


「……どーすっかなぁ」


 あごに手を置きひざひじを置く。

 はたから見たらまるで、親に怒られてふてくされている少年のようだな。


「イリアの短剣、あれって……投げに適してない気がするんだよな」


 イリアの得物えものは、刀剣に近いダガータイプだ。

 に手を守るシールドガードが付いており、投げて回転していたらキャッチしにくい筈なんだよ。


『――シンプルな構造のものが、投擲とうてきには最適だと思われますが。キルネイリア・ヴィタールの技術は現在……本当に、その……』


 お?【叡智えいち】さんが言いよどんでいる。

 これはあれだな……イリアには悪いが、気を遣っているんだろう。


 まぁ、勉強しろって言ったの俺だしな。


「分かってるよ。イリアの戦闘技術はまだまだ未熟……俺だって剣技はそこそこだし、能力頼りな事もいなめないさ……だからこうして、物に頼るんだろ?」


 武器もそうだが、今日買ったこのガントレットもそうだ。

 イリアに【念動ねんどう】と言う能力を与えたのだって、言ってしまえば俺の身勝手だからな。

 それだけ、あの子には頑張って欲しいし、目的を果たして欲しいと思ってる。

 だからこそ協力的になれるんだよ。


「これから、【無限むげん】を使ってこのガントレットをととのえる……【叡智えいち】さん……ウィズもさ、なんか出来るらしい事を言ってただろ?」


『――はい。自分で言うのもなんですが、【叡智ウィズダム】と【無限インフィニティ】の相性は抜群です。演算えんざんは一瞬で完了しますし、今までご主人様が【無限インフィニティ】の使用で記録した数値も全て一瞬で引き出せます』


「マジか……」


『マジです』


 うおぉっ!俺がいじくって来た物体の数値をロード出来るって事か。

 それは便利だな、便利過ぎるくらいだ!

 手間が省けるってもんだぞ、マジで。


「なぁウィズ、それはいつでもできるのか?」


無論むろんです。ウィズならば、ご主人様がおこなってきた【無限インフィニティ】の無駄な……いえ、なんでもありません』


「もう言ってんじゃねぇか!悪かったなクソ効率悪くてっ!!」


 つまりなんだ……俺の不出来な操作方法を、【叡智えいち】さんはもっと完璧な状態で発動させられるって事か。

 きっとそれは、効率もいいんだろうな。


「俺の【無限むげん】は、数値をいじる度に魔力を使う。正直言って、燃費はそうとう悪いよな……」


『【無限インフィニティ】の使用魔力は、数値を変更する度に消費されていきます。数値は様々な項目こうもくがあるのはすでにご存知でしょうが、一つの数値を変えるごとに魔力は消費されます。それを、ウィズならば一瞬で数値を直接書き出す事が出来ます』


「言ってしまえば、セーブ&ロードが出来るって事だろ?でも、一瞬で数値を入力してしまえば、【石の槍ストーンスピア】のようないきおいを利用した技はどうなる?」


 突出させることで貫通させる【石の槍ストーンスピア】は、俺の得意とする魔法もどきだ。

 落ちてる石の数値を一から数十に変更する事で、急激に伸びるように見せるんだ。


 先端から全体、鋭利えいりさや重さ、硬さなども同時に変更してるんだよ……意外と繊細で、めちゃくちゃ気を遣う能力だよな……本当にさ。




 ――――――――――――――――――――――――――――――

・【澪から始まる】用語その11

 【カラドボルグ】。ミオの初期の転生の特典ギフトであり、金色の大剣。

 神話において、エクスカリバーの基となった逸話を持つ剣だが、その能力は未だに多くの謎が残っている。

 主に物理ではなく、魔法斬撃のように設定されており、敵に触れる直前で衝撃波を発生させる事が出来る。

 よって、魔力を使えば【クラウソラス】を防ぐことも出来る。

 普段はクラウの【クラウソラス】と同じように魔力に返還されて、現実には存在しなく、戦闘時だけ、空間を裂くように具現化する。

 つばの部分になにやら宝石のようなものを取り付けられそうなくぼみがあり、組み合わせによって効果を発揮する……とミオは予測している。

 本来、使用方法は転生者なら脳内学習で理解できるはずなのだが、刃物によって殺害されたミオには大きなトラウマになっている。

 ミオは基本的には剣を使わないため、未知数なことが多い転生の特典ギフトである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る