5-36【防具調達2】



◇防具調達2◇


 魔力関連の問題は熊のおっちゃん次第になったが。

 次の問題はイリアの【念動ねんどう】……その武器をあつかう為の装備、手甲や手袋みたいなものが欲しい所だな。


 イリアの戦闘スタイル……短剣の二刀流だ。

 そこに【念動ねんどう】が加わった事で、それを投擲とうてきして、空中に浮く短剣を操り敵を狙う事が出来るようになった戦術は、自分にも大きなダメージを与えることが分かったんだ。


 魔力をまとわせて投擲とうてきし、その魔力が続く間は【念動ねんどう】で操れる。

 しかし、戻って来る時に魔力が切れれば、その遠心力は凄まじい。

 しかも回転もしているし、一朝一夕で習得できる能力ではないんだ。


 技術を身に着けるには時間が必要だよな。

 才能も必要かもしれない……だけど……


 キツイ事を言うが、イリアにはその才は……おそらく無い。

 だから、少しでも多くの強化バフが必要だ。

 まずは装備、そしてそれから、身体能力の向上だ。


「熊のおっちゃん。手袋とか手甲みたいな、腕をひとまとめに守れる防具とかってあるかな?」


 俺は聞く……分かってて。


「ん?……おいおい、ここは装飾屋だぞ、まぁない事もないが……そっちのたなにあるよ、丁度ちょうどあの……青髪のお嬢ちゃんが見ているようだが」


 おっちゃん……“青髪”の所で詰まったな。

 やっぱり珍しいんだな、青い髪って。


 だけどこれは……もしかして、ミーティアも同じ考えだったのかな。

 その隣にはイリアもいるし、行ってみよう。


「二人共、もしかして……」


 商品を見る二人に、俺は声を掛ける。


「――あ、ミオ……お話は終わった?」


 ちらちら見てただろミーティア。

 まったく、心配しすぎだって。


「ああ。ごめんな待たせて……で、見てるのは手袋かな?」


 俺の言葉に、イリアが答える。


「――はい。私の剣のあつかいは、正直言ってド下手くそです……」


 お、おう……自覚ありだったのか。

 にしても、自分でそこまで言わんでもよくないか?


 だけど……それでも冒険者を目指す精神力……尊敬そんけいするよ。


「投げて戻って来る剣をつかみ取るのも難しいですし、むしろ怖い……」


 だよな。下手すりゃ自分の指が……だからな。

 考えたら俺だって怖い。

 そう言えば昔、あ……前世の頃な。

 確か中学の頃、公園でブーメランを投げて遊んでて、キャッチをミスって股間を強打した事がある。痛かった。

 球技で落下してくるボールが股間を直撃した事もあるな。痛かった。

 男女混合サッカーをしていて、ボールを蹴ろうとした女子に、股間を蹴られた事もある……男を辞めたと思ったよ。


「……ミ、ミオ?」


 首をかしげて、ミーティアが俺をのぞく。


「あ、ああごめん……ちょっと思い出して」


「え……?何を思い出して涙ぐんでるの?」


 おっと、涙出てた?


「いや、なんでもないから。気にしないでくれ」


『――ご主人様の精神耐性が二十五パーセント低下。俗に言う――』


 言わんでよろしい。


「う、うん、分かった……それでね、私も考えたのよ」


「ああ、イリアの……防具、だろ?」


 俺はニッ――と笑う。

 よかったな、ミーティアと考えが似ててさ。

 俺の言葉にミーティアも、パァ――っと嬉しそうにうなずくのだった。

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