5-32【イリア強化作戦3】



◇イリア強化作戦3◇


 俺たちは、とうとう魔力切れでぶっ倒れたイリアを介抱かいほうして、多少動けるようになった状況で……イリアが言う。

 「予定があるなら私に構わず行ってください」と。

 そんなはかなげで悲しいこと言うなって。


 まぁ俺たちの予定ってのが、そもそもイリアの為のものだから、回復を待つのが予定っちゃ予定なんだけど……心配させたくないんだろうな、この子は。


 そして――少しして。


「――う、動けるようになりましたっ」


「そう?フラフラだけど、平気?」


「こらこら……」


 クラウ姉さん、余計なことは言わないの。

 イリアの根性をんであげてくれよ頼むから。


「よ、よし。それじゃあ行くところがあるんだ。イリアにもついてきて欲しいから……だ、大丈夫か?」


 俺まで聞いてしまった。

 自分で言ってて、申し訳ねぇ。


「へ、平気です……」


 言葉では言えても、顔がそうは見えないんだよなぁ。


『やせ我慢という奴ですね。キルネイリア・ヴィタールの体力値は、最大値の半分以下です』


 知ってるよ、それだけは見りゃ分かるって。

 【叡智えいち】さんのお言葉をスルー……出来てるかは分からないが、俺たちは訓練場を後にする。

 次の目的地は【ステラダ】の市場……通称、【ステラマーケット】だ。





 【ステラダ】の複合市場、【ステラマーケット】。

 様々な店が並ぶ、数キロメートルにも及ぶ直線市場だ。

 目的は、武器と防具、そして装飾を見る事だ……でもって、良い物があれば速攻で買うつもりだ。


「はぁ……いつ来ても活気があるわね……き、気持ち悪いぃ……」


 クラウ姉さんが言う……うわ、顔色悪っ!!

 この人どうやら、人混みが苦手らしい。

 俺も強い方ではないが、クラウ姉さんよりはマシかな。


 ド田舎ののどかな環境かんきょうで過ごしてきた弊害へいがいかな。


『ご主人様はともかく、クラウお姉さまは前世からも苦手にしている可能性があります』


 あ~、そういう事も分かるのか【叡智えいち】さん。

 もしかして、クラウ姉さんがどんな人だったか……――いや、それは絶対に言わないでくれ。後生ごしょうだから。


『――どうしてでしょう?』


 決まってる。プライベートだからだよ。


『……』


 ――黙ってくれた。これは承諾りょうしょうしたってことにするからな?

 いくらなんでも、クラウ姉さんの過去を詮索せんさくするつもりは俺にはない。

 俺が転生者であると言う素性を隠しているのに、それをするのはナンセンスだろ。

 まぁ、クラウ姉さんが転生者だって事だけは、昔から知ってるんだけどさ。

 それは言いっこなしって事で頼むわ。


「よしっと、それじゃあ……まずはこれを売りに行くかっ」


 俺は肩にかついだ麻袋を持ち直して、三人の少女に言う。

 この中には、【スケルトン】系の魔物から落ちた素材が詰めに詰め込まれている。

 どれも高品質の物だぞ、高く売れるさ。


「それを売って、何を買うのですか?」


「ふふっ。それは内緒よっ」


 イリアが、こそっとミーティアに聞いたが、ミーティアは笑って誤魔化ごまかす。

 助かるぜミーティア。

 何たって、これからイリアの装備を整えに行くんだからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る