5-29【応援のススメ3】



◇応援のススメ3◇


 く、くそ、やりづれぇ……クラウ姉さんの視線が刺さるようだぞまったく!


『――ご主人様の態度がおかしいからでしょう』


 誰のせいだよ【叡智えいち】さん!!

 いちいちお前の言葉に反応しちまうからだろーがっ!


『――なら無視で構いませんよ。ウィズはご主人様に勝手に話しますので……その代わり、ウザいくらいに話しますけどね』


 だから!それが余計なんだってのっ!!

 悪かったなシングルタスクで!!


「ミオ、どうしたの……?」


 クラウ姉さんが、にらむように聞いてくる。

 本人にそのつもりは無いんだろうけど、怪しむときはだいたいこう言う顔をしてるんだよ。


「――いっ……や、なんでも?」


『――何故なぜ疑問形なのです。ハッキリと答えればいいでしょう』


 うるせっ!いちいち言ってくんな!


 クラウ姉さんは、慎重に……けれども探ってくるような感じで言う。


「キルネイリアとの話は終わったわよ。これからミーティアと訓練をするそうだけど、ミオはどうするの……?」


 なるほど、二人で訓練か……なら俺は、観戦でもしようかね。


「あ、俺は見てるよ……イリアの戦い方は知ってるし、欠点の洗い出し……かな」


 そうだ。イリアの戦い方は、まだまだ荒削りだし……【念動ねんどう】の使い方も慣れて行かないとな。

 だから失敗して、変な方向に飛んで行ったんだろ?


「なるほどね。でも、今のあの子の戦い方は危険でしょ?そこから洗い出した方がいいわよ?」


「――お、流石さすがクラウ姉さん。俺も思ってたんだよ……」


『――ウィズが助言いたしました』


 【叡智えいち】さんは無視しておきます。


「思ってた?……じゃあ早いうちに改善しないと、そのうち怪我をするわよあの子」


 あきれ気味にクラウ姉さんが言う。はい、ごもっともです。

 だからさ、用意はしてあるんだよ。


「――その為の、この荷物さ!」


 俺は、実は肩に麻袋をかついでいたんだ。

 だからさっき動けなかったんだよ。


「ああ~、なんだったのよ……その麻袋」


 気付いてて言わなかったのか、結構な大きさの麻袋だぞ?

 無視されてんのかと思ったじゃん。

 まぁでも、クラウ姉さんなら……何が入っているかなんて予想できそうだけどな。


『はい。クラウお姉さまは、分かっていて聞いてきているのでしょう。探られないよう、ご注意をしてください』


 わかってるさ。


「素材だよ。前回の依頼サポートで稼いだやつ」


 ドンッ――と置くと、中身がガラガラと音を立てた。


 ふふふ……俺も結構な量を稼いだからなぁ、グレンのオッサンに渡す分は差し引いてあるから、これが俺が自由に使えるって訳なのだ。


「……それを資金にして、あの子の装備をととのえるのね?」


「その通りさ」


 クラウ姉さんには完全に見透かされてるな。

 そう、これが俺の応援の仕方なんだよ……俺は、キルネイリア・ヴィタールを支援する事を決めたんだ……言わば、援助金だな。


 能力を与え、武器を整える……そして次は修行だ。


「ミーティア!イリア!」


 俺は声を二人に掛ける。

 丁度ちょうど良く二人が訓練をするなら、是非ぜひともやって貰いたい事があるんだ。


 それは――


『――キルネイリア・ヴィタールの【念動ねんどう】の練度レベルを上げる事ですね。今のキルネイリア・ヴィタールでは、低レベルの技量しか【念動ねんどう】を使えません。魔力の量も常人より低く、強くなる見込みはありませんが』


 うるせぇよ。それを強くさせる事が、俺の役目なんだ。

 これが俺の応援の仕方なんだよ、だから……【叡智えいち】さんも考えてくれよ。な?


『……了解しました』


 よし。それでいい……じゃあ始めようか。

 キルネイリア・ヴィタール――強化作戦をっ!

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