5-28【応援のススメ2】



◇応援のススメ2◇


 女子寮にミオとミーティアの二人がやって来て、見事に合流したのは私……クラウ・スクルーズよ。

 二人の目的はキルネイリア・ヴィタールの様子を見る事だったらしいけれど、彼女は早朝から訓練場へ向かっていた。

 まぁ、私も寮母さんから聞いた話なのだけれどね。


 そのむねをミーティアにつたえると、ミーティアは「外で待っているミオにも言わなくちゃ!」と急いだのだ。

 だから私も何の気なしついて行ってみた。今日の予定も無かったしね。


 そうしたらなにやら、弟ミオの様子がおかしかったのよね。

 一人で外で待っていたのだが、どこか変。

 なにもない場所を見ていたかと思えば、急ににらんでみたり、しかめてみたり。


 でも私には、ミオが何かを見ているように見えたのよね。

 しかも何故なぜか、村にいる誰かさんに対する態度とよく似ていた気がした……本当に些細ささいな変化だけれどね。


 そして三人で、キルネイリアに会うために訓練場へ向かう私たち。

 私は先頭に立って歩き、ゲートを抜けて顔を出そうとした瞬間――


「――けてぇっ!!」


 そのあせったような言葉に、私は咄嗟とっさに動こうとしたが、ミオが――


「――姉さん前っ!」


 そうか……けたら二人が居たんだった。

 危ない危ない。


「分かってるわよ!こんなせまい所でけられる訳ないでしょっ!!――【魔障壁マ・プロテク】!!」


 実はけようとした事を隠しながら、私は短縮魔法を発動する。


「ク、クラウ!?」


 ガキャンッ――!!っとはじかれたのは、短剣だった。


 光の壁にはじかれた短剣は転がり、私たち三人は訓練場に足を踏み入れる。

 すると、そこにはポツンと一人で座り込む少女が。

 ハーフエルフの少女、キルネイリアが……今にも泣きそうな顔で、私たちを見ていた。


「――なんて顔なのよそれは」


「ク、クラウ!!よかったぁーー!」


 心底安心したように、キルネイリアが立ち上がって駆け寄ってくる。

 よかったというのは、被害が出なくてって事?

 それとも“私で”って事?事と次第によってはデコピンの一発くらい見舞うわよ?


「ど、どうしたのイリア、こっちがおどろいてしまったわ……?」


 ミーティアが言う。

 続けてミオも。


「【念動ねんどう】の制御が出来なかったらしいな。一人でやってたら危ないって……練習の時は誰かいた方がいいよ」


 ミーティアとミオの二人がキルネイリアに言うが、ミオはやけに冷静だと思った。

 いつもなら「何があったんだ!?大丈夫か!」って言いそうなところだけれど。

 私の視線を感じたのか、ミオは口籠くちごもり黙る。


 二人はあわあわするキルネイリアの弁明を聞いているが。

 私はミオの行動、言動が気になって仕方がなかった。


「す、すみません、お三方……自重します、自重しますので……なにとぞ!」


 泣きそうなキルネイリアのそんな言葉を、私は半分以上聞き取れていなかった。


 この違和感はなに……?ミオの様子、それがどうしようもなく気になって……きっとこの後の事も、明日になればほとんど覚えていないかもしれない。

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