5-27【応援のススメ1】



◇応援のススメ1◇


 訓練場にて、ハーフエルフの少女……キルネイリア・ヴィタールは、まだ痛む筋肉痛の身体を無理矢理に動かしながら、能力――【念動ねんどう】を発動する。

 手に持つ短剣に自分の魔力をまとわせ、自由に動かせるようにしたのだ。


「――ぃよしっ、やりましょうっ!」


 ズキズキ痛む二の腕に力を込めて、持った二刀を振るう。

 初めは普通に剣舞だ。腕はまぁまぁ、見た目としては綺麗だが、キレはない。


 自分の最大の武器は素早さだ。

 クラウには遠くおよばないが、それでも早いと言われる部類のはずだ。


「ふっ――はっ――!!」


 肉体がきしむ。

 魔力を放出し続けている事で、疲労も直ぐに溜まってしまって辛い。

 しかし本番はこれから、【念動ねんどう】で短剣を飛ばす!


「それっ!!」


 両手の短剣二本をクロスさせるように交差させ、そのいきおいで投げ飛ばす。

 魔力はまとわせているから、後は念力で操作するだけなのだが。


(むぅ……!)


 投げた短剣はくるくると回転し、キルネイリアは宙に浮く自分の得物えものを見る。

 まだ完全に修繕しゅうぜんされてはいない訓練場……地面の穴はふさがれているが、観覧席などはまだ直す所が沢山あるようだった。

 ちなみにだが、直しているのはクレザース家……ロッド・クレザースの自費だ。


「――う~動いて!!」


 右手をブンッ――と振るうと、合わせたように短剣が高速回転をして勢いを増す。

 何度も短剣を空中で行ったり来たり。

 円盤のごとく回転する短剣は、キルネイリアが自在に操っているが、フラフラと何度も墜落ついらくしそうになる。


 魔力が不安定なのだ。


「くぅ……難、しいっ!荒野では……出来たのにっ」


 何度か空中で不規則な動きを見せると……短剣はキルネイリアの方角に向いた状態で――その魔力を途切れさせた。


 それはつまり、もう【念動ねんどう】が切れたという事であり。

 飛んでくるのはただの剣だ。


「わっ……わわっ――っとぉぉぉ!」


 ぴょいんっ――と跳ねて、自分に向かって飛んできた短剣をける。

 ガッ――!!と、キルネイリアの足元があった場所に突き刺さる短剣一本。


「――あれ!?もう一本!!」


 ひざを着いたキルネイリアは、辺りを見渡す。

 残りのもう一本の短剣は完全に操作できなくなっており、魔力も無くなったただの短剣となって……訓練場の入り口に飛んで行った。

 そしてタイミング悪く、誰かがこちらに向かって来ていたのを、キルネイリアは目撃し。


「あ――よ、けてっ!!」


 訓練場には、まだ人が来ない筈だった。

 だから一人で訓練をしていたのだが、まさかこんなタイミングで生徒が来るとは。

 このままでは、まだ暗がりにいる生徒に直撃してしまう。


 しかし――


「……【魔障壁マ・プロテク】!!」


 その声は、たったの一言短く魔法名をはっすると、入り口に小さな光の壁を出現させ、短剣を防いだのだった。

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