5-21【収獲はあっただろ?】



◇収獲はあっただろ?◇


 俺たちが【ステラダ】に着いたのは、もう深夜目前だった。

 ロッド先輩と一緒に、【ギルド】に依頼の失敗を報告をし、先輩から二人分の評価表を貰って外に出る。

 外では、ハーフエルフの少女キルネイリア・ヴィタールが、ベンチでグデッていた……マジでしんどそうだな。


「――ほい。評価表」


「あ、すみません……ミオ」


 俺の手から受け取るイリア。まだ顔が青いな、どうやら筋肉痛はまだ抜けてはいないようだ。


「依頼自体は失敗だから評価はもらえないけど……おっ?」


 俺が確認すると、依頼の点数はぜろ点だったが……ロッド先輩からの評価は二点だった。


「……わ、私は一点でしたぁ」


 落ち込むイリアだが、まぁこんなものだよ。


「ははは、平気だって。今回の依頼は失敗だけど、素材を売ればオッサンも文句は言わないだろうし……それに、な。【念動ねんどう】を得られた……って言う収穫があっただろ?」


 俺はイリアの隣に腰を下ろして言う。


「……はい。そうですね、収獲の方が多かったと私も思います、ミオのおかげですね」


 そうだよ。何よりもそれがでかいんだ。

 そう思えば、依頼の失敗なんて些細ささいな事だ。


 グレンのオッサンが怒るかもしれないが、先を見ればプラスに働くはずなんだよ。

 だからイリアも俺も、気にする必要は無いと考える。

 まぁロッド先輩だけは、依頼の失敗で三年の先輩から点数を貰えないんだけどさ。


「俺のおかげ?……そんなことないって。イリアが頑張らないと、覚えたものも意味はないし……まだまだこれからさ、おたがいになっ」


「――はいっ!頑張りま――すぅぅっ!」


 気合を入れようとしたが、ピキン――と固まるイリア。

 ほらほら、無理すんなって。


「あははっ!そんじゃあ帰るかっ、女子寮まで送っていくからさ。ロッド先輩はまだ【ギルド】に用があるようだから……イリアの事を頼まれてもいるしなっ!」


「す、すみませぇん……」


 そんな筋肉痛のイリアを女子寮に連れて行くことにして、俺は苦笑いをしながらゆっくりと、イリアに合わせて歩いていくのだった。





「つ、疲れた……」


 普通に疲れたな。

 イリアを送って行った際、クラウ姉さんの相棒であるラクサーヌ・コンラッドさんと会ったのだが、女子寮にクラウ姉さんはいなかった。


 ラクサーヌさんによると、朝から出かけていたらしいが……深夜になっても帰ってこないとは……まさか朝帰りではないだろうな。

 一抹いちまつの不安を覚えながらも、俺は自分の部屋に戻る。

 この時間だと、流石さすがにミーティアも寝ているだろうか。

 それとも、実家に帰ったままかな。


「……ただいま」


 あ~うん……静かだな。

 部屋も暗いし、寝てるのかな。


「っと、明かり明かり……」


 魔法の力で電気を再現した部屋の明かりをつけると……突然、油断した俺に声が掛けられた。


「「――お帰りぃぃっ!!」」


 ババーン――!!と、物陰からジャジャジャジャーンする二人の少女。


「――おわっ!!って……ミーティア!?」


「私もいるんだけど」


 と、その後ろはクラウ姉さんだった。

 ミーティアの後ろにすっぽりと隠れて……便利な身体だな。

 つーかなんだよ、ここにいたのか……クラウ姉さん、ラクサーヌさんが心配してたぞ?

 俺はてっきり、朝帰りをするお遊びさんになってしまったのかと……思う所だったよ。

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