5-19【プレゼントを探しに2】



◇プレゼントを探しに2◇


 【ステラダ】には、結構な数の店がある。

 【リードンセルク王国】だけではなく、各国から集められた商品が、様々な商会を通じて店におろされ、販売しているのだ。


 【クロスヴァーデン商会】もその一つであり、特に売り上げを出しているのだが、それは娘であるミーティアには関係ない事だ。

 個人的には勉強にもなるし、将来の為に学んでいる最中だ。

 冒険者学校に通っていても、ミーティアの目標は自分の店を持つことである。


 今もこうして……色々な店を隅々まで観察しているのだ。


「……」


 じぃぃぃぃ……っと、並べられた商品を見るミーティアの視線は、商人のそれだ。

 しかし隣にいる背の低い少女、クラウ・スクルーズはあきれた顔で。


「ミーティア。いい加減にしなさい……ミオへのプレゼントを買うんでしょ?」


 ミーティアの首根っこをつかみ上げて、クラウは店から出る。

 この店には求めている物はないのだから。


「ちょっ、待って!まだ見てるの、販売価格が!他の店と比べないとぉっ!」


「それは一人の時にでもしなさいっ!ほら!他のお客さんに迷惑でしょっっ!」


 まるで親子のようなやり取りに、周囲の人たちも笑みを浮かべていた。

 しかし、引っ張っているのは背の低い少女だ。

 それも相まって、笑みが溢れているのだろう。


「うわぁぁぁぁぁん!」


「うわぁぁぁぁぁん。じゃないっ!!ほらっ!シャンとして!!自分で歩きなさいよ!」


 どちらの方が立場が上なのか、明白になるイベントだった。





 ミオの求めているものは何だろう。

 彼が何かを欲しがっている所を、私は見た事が無かった。

 三ヶ月近く昼夜を一緒に過ごして、普段の生活やリズムを知ることは出来た。


 でも、彼の好きな物を知らない。彼の嫌いな物を知らない。

 食は何でも食べるし、何かを残している所を見たことはない。


 例えばお風呂が好きとか、寝るのが好きとか、アレが嫌いコレが嫌い……そう言った事を、ミオは一切見せてくれない。

 だから、欲しがっている物も分からない。


「これは?」


「う~ん」


 私は露店ろてんで、緑色の腕輪を彼の姉、クラウに見せる。

 風の魔力を注入した、属性防御の腕輪なのだけど……どうにも見た目のセンスがない。


付与ふよされているのはいいけど……ねぇ」


 クラウも、性能的には納得のようだ。

 でも……どうも乗り気ではない。

 小声でクラウが「ダサイ……」と言う。まさにその通りだった。


「……見た目、だね」


「……」


 うなりながら、その腕輪をにらむ。

 店の店主が咳払せきばらいをしているが、私もクラウも気にしない。

 むしろクラウの視線に「ひっ……」と尻込みしているくらい。


「違うのにしようかな……ここじゃないかも」


「そうね。それがいいわ……ここではない」


 なんだか、私とクラウとでは意味合いが違う気もするわね。

 私は“ここの商品ではない”……と言う意味だったけど。

 クラウの場合“この店は駄目だめ”……と言う風に聞こえなくも無かった。


「じゃあ、行くわよ」


「う、うんっ」


 ズカズカと、金髪を揺らしながらクラウが歩いて行く。

 私は後ろを追って、小走りで駆ける。

 この様に私たちは、こうして何件もの店をめぐって行くのでした。

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