5-5【お咎め無し3】



◇おとがめ無し3◇


 俺がレイナ先輩の依頼サポートから帰って来て、二日後には訓練場に向かった。

 訓練しないとって思ったんだけどさ……だけど、封鎖ふうさされていたんだよ。

 なのに、ミーティアは何も言ってくれないしさ。

 不思議ふしぎだとは思っていたんだよ、ロッド先輩をクラウ姉さんが倒したのなら、その場所は何処どこですかねぇ……ってさ。


『あぁ……あれか』


 思い出す……訓練場の外壁が、穴ぼこだらけだったことを。


『はい……あれはクラウがやりました。犯人です』


『――ちょっ!!そんな率直そっちょくに言う!?』


 クラウ姉さんが立ち上がってイリアに言うが。

 言ってくれんと困るんだよ、だから面倒臭めんどうくさい事は早めに言ってくれ……突然言われても対応出来んから。


『よし。続けてくれ、イリア』


 『ちょっ!こらミオ!』とクラウ姉さんが言うが無視だ。

 怒られたくないからって話題をらそうとするんじゃありません。

 そう言う所を、ルドルフ父さんによく怒られていただろ?


『は、はい……クラウの魔法で、訓練場は半壊……いえ、ほぼ全壊でした』


 確かにすげぇボロボロだったな……どんだけの威力の魔法使ったんだよ……この人。

 あ、視線らしやがった。


『その場にいた私たちは、当然反省文を書かされて、数日間謹慎きんしんしていましたが……』


 当事者ね……なるほど、二人が謹慎きんしんしてたから、ミーティアはその日俺に言えなかったのか。


『ロッド坊ちゃんとそのご友人……それと私たち三人が、評価ポイントの減点をされてしまいました。特にクラウは、訓練場の修繕しゅうぜんを課されていたのですが……』


『へぇ……そういう事もあるのか。それで……ですが、なに?』


 結構自由な感じだと思ってたけど、まぁルールを守れなきゃ駄目だめだよな……そこらへんは、地球と一緒だわな。


 ミーティアが、イリアに続けて言う。


『――ロッド先輩が、修繕費全額を負担してくれたのよ。ビックリしたわ……』


 さっきの負担って……やっぱり訓練場を直すための修理費の事だったか。

 つまり、ロッド先輩がそれを肩代わりしてくれたって事か?


『なんであの人がそこまでするんだ?』


 いくらイリアのやとい主で、年の近い姪っ子だって言っても……クラウ姉さんがやらかした事まで被る事はないだろ。


『邪魔したから……だと言っていました』


『ロッド先輩がそう言ったのか?』


 イリアは嬉しそうに『はい』と言った。

 ロッド先輩は自分のした事を後悔こうかいしてんのか?

 そんないさぎのいい人には思えなかったけどな……人って難しい。


『まぁ、イリアが言うんだから信じるけどさ……』


 つまり、クラウ姉さんとイリア、ミーティアの三人はポイントの減点こそあれ、基本的にはおとがめ無しって事だ。

 修繕費はロッド先輩が払ってくれて、謹慎きんしんも数日だ。

 特にミーティアは、あの日もこの部屋にいたしな。

 ポイントの減点も、多分……そこまでの数値じゃないんだろうし。


『はい……これからもよろしくお願いします』


 深々と頭を下げるイリア。

 まぁイリアがいいと言うんなら、俺たちがとやかく言える事じゃないからな。

 最優先だったイリアが冒険者を目指せる事さえクリアできたのなら、時間が許す限り、努力をしよう。


 これで、あの日の事は終わりなのかな?

 なら……俺も聞きたい事があるな、クラウ姉さんとミーティアにさ。


『――で?二人はどういう結託けったくをしたわけ?』


『け、結託けったくって……』


 ミーティアがほほをポリポリと掻く。


『ちょっと待ちなさい、言い方があるでしょう……ミオ』


 いや、だってそうだろ。

 クラウ姉さんはトレイダがミーティアだって知ったんだ。

 でもって、それから何も言わずに静観せいかんしていた……まぁ謹慎きんしん時間があったからかもしれないけどさ。

 それでも、今後どうするのかを聞いておかないと、後から大変そうだしなぁ。

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