5-4【お咎め無し2】



◇おとがめ無し2◇


 イリアが冒険者を目指せるって言う事は、俺が考えていた事をそのまま実行できるという事……これはいいニュースだな。

 グレンのオッサンが言ったのは『夏までに強くなれ』……そう言ったんだ。

 つまりは、約二ヶ月後だ。七月か八月と想定する。


 それまでにグレンのオッサンを認めさせれば、【アルキレシィ】討伐、もしくは観察かんさつかなんかの依頼を出して貰えるかもしれないんだ。

 討伐ならそのまま倒す……観察なんかだったら、隙を見て戦いに持って行くつもりだ。

 そして最大の問題は……イリアが強くなる事だ。

 かたきを討つためには、俺が強くても意味はない……俺はサポートに徹するんだ。


 イリアを強くする……俺の能力を駆使してな。


『……ロッド先輩が協力してくれるんなら、依頼サポートは戦闘系が多いだろ?』


 三度あの人のサポートをして、三回とも魔物戦闘系のサポートだったからな。

 ちなみに……倒したのは俺とトレイダだったけどさ。

 今イリアの話を聞く限り、きっと今後は違う。


『そうですね、一年の時から対魔物クラスでしたし、受けていたサポート依頼も魔物討伐系でした』


 イリアがうなずく。


 そうだろうな。俺とミーティアもそうだし……クラウ姉さんは総合クラスで、逃亡犯罪者の捜索そうさくや物探し、いわゆるお使いクエスト的な事もしてるらしいが。


『なら丁度ちょうどいいさ。今度話させてくれ先輩と……協力してもらいたいんだ』


 俺の言葉に、イリアは。


『――わ、私もミオに頼みたかったんですっ!坊ちゃんが言い出したんですよっ!ミオ・スクルーズに協力して貰えってっ!』


 興奮しながら、イリアは俺の手をつかもうと前進……しかし。

 俺とイリアの間に……光の剣が具現ぐげんした。


『『わっ!!』』


 おいこらぁぁぁ!魔力ないんじゃなかったのかよクラウ姉さん!

 って……ミーティアもそんな目で見ないでくれ、俺は何もしてないから!


『……男女の接触は禁止。スクルーズ家うちの家訓でしょ?』


 なにそれ……俺知らないけど、その家訓。

 クラウ姉さんは俺とミーティアを交互に見る、ジト目で。

 おいおい、なにをうたがっているんだよ。


『な、何もしてないってば……』


『そ、そうよ』


 とっても健全だよ。寝る時は耳栓してるし、アイマスク代わりに目を隠して寝てるんだぞ!俺がどれだけ辛抱しんぼうしているか、分かってくれよお姉さま!!


『ほらっ、それよりも話だろ!?イリア、続けてくれ』


『は、はぁ……よろしいので?』


 ちょっと待って、なんで残念そうなんだよ……この子、もしかしてトラブルを遠目に見るのが好きなタイプか?巻き込まれたら困惑するぞ?

 そんな少し残念そうなイリアが、話を続ける。


『続けます。ロッド坊ちゃんは、クラウと戦って敗北しました……条件は守ると言っていますし、色々と負担ふたんも負ってくれました』


負担・・……?』


 つまりなんだ……金か?


『――あ』


『は?』


 イリアの言葉に、クラウ姉さんが何かを思い出したかのように口元に手をやる。

 そして俺は知る事になる……ここ最近、訓練場が使えなくなっていた理由を。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る