5-3【お咎め無し1】



◇おとがめ無し1◇


 クラウ姉さんとイリアは、俺が用意したクッション……お客様座布団ざぶとんに座る。

 まるで日本の家を思い出させるような状況だが、実はこれ……スクルーズの家では基本的にお客様にお出しするものなんだ。


 結構昔に、クラウ姉さんが言い出したんだよ。

 だから俺が発案したわけじゃないから、転生者バレをする事はないんだ。


『――で?要点は?』


『私の魔法で隠れて来た。でもって帰りの魔力がありません、泊めてぇ?』


 おい!聞いてねぇよ!!

 そんな可愛い愛玩あいがんポーズしても駄目だめだ!!


『き、聞いてないわよクラウ……』


 これはミーティアも知らなかったらしい。


『なに?文句ある?』


 あるに決まってんだろ!

 言ってやるんだ、ミーティア!


『そ、れは……ないけどさぁ』


 いや無いのかよっ!!ミーティアなんで?

 ミーティアは俺からの『断って』の視線かららす……らすなって!


『ミーティアとミオがきちんと健全してるか……見ておかないとねぇ』


『うっ……』


 いや、うっ……じゃないだろミーティア!

 何もねぇって、ノープロブレム。無問題もうまんたいだ!!


『クラウ姉さん……本題っ』


『あーそうだった……キルネイリア』


『はい』


 結局イリアが言うのかよ……と言うか、イリア正座上手いね……姿勢もいいし。

 胡坐あぐらをかいてる俺の姉とは大違いですよ。


『分かった、じゃあ頼むよ……』


 俺は半分疲れたまま、イリアの話を聞くことにした。


『では、ミオも疲れていそうですので率直に』


 助かる。


『この前、色々とあったことは聞きましたか……?』


『ん……ああ、ミーティアに聞いてる。でも、具体的な内容はまだだよ』


 そう、それを話しに来たんだよな。

 クラウ姉さんは余計な事を言わないでくれよ?


『そうですか。ミオのお姉さま……クラウのおかげで、坊ちゃん――ロッド・クレザースから、冒険者を目指す許可を頂きました』


『へぇ……あの人が』


 クラウ姉さんのおかげか……ったんだろうな。

 俺がクラウ姉さんをちらりと見ると、どうやらミーティアの生活ゾーンを観察しているようだった。

 いや、しゅうとめかよっ!


『はい。ですので、今後もどうぞよろしくお願いします……ミオ』

⦅シャワー室での事は、いいですよね……あの二人がやった事ですし⦆


 イリアは頭を下げ礼を言う。

 いやいや……俺は何もしてないからさ。

 むしろ、俺が何かをするのは……今後・・だよ。


『ああ。よろしくな!でも……それはよかったよ、だってこれで……【アルキレシィ】討伐を目指せるんだろ?』


 イリアの最大の目的は、両親のかたきである魔物……【アルキレシィ】を討つ事だ。

 それに関しては、俺も話す事があったから丁度ちょうどいい。


 俺の言葉に、イリアは強くうなずいて言う。


『はい――絶対に叶えます……』


 やっぱり、意志は強い子なんだな……なら、俺たちは協力するさ。

 それで俺も、自分の先を見れるからな。


『うん、後は……ロッド先輩が協力してくれるのは幸運だな、それを言うってことは、今後もそうなんだろ?』


 あの人、イリアに固執こしつしてた感じもあったけど、いったいどんな手を使って説得したんだろうな……うちの姉は。


『はい!依頼のサポートも出してくれるらしいです、勿論もちろん正当な評価も入れて下さると言ってくださいました!』


 やけに嬉しそうだな。

 でもあの人……俺とトレイダに、一点しかくれなかったんだよなぁ。

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