5-2【これはまたお揃いで】



◇これはまたおそろいで◇


 よしっと……まぁこんなもんだろ。

 俺はテントのロープ止めを地面にぶっ刺して、【無限むげん】で固定する。

 強風が起きても平気なようにしておかないとな。


「終わりましたー……って」


 もう一つ、先に設営したテント内に入ると……そこでは。


「お、お疲れ様です……ミオ」


「……ご苦労」


 ロッド先輩が、イリアの手当てをしていた。

 先輩は俺を見ながら言う。


「なんだ?」


 おおう……文句があるのかって言いたそうだな。

 いやさぁ、だって変だろ?この前まであんなに偉そうにしてたのにさ……まぁ、事情は聞いたから何も言わねぇけどな?俺にだって思う所はありまくりなんだよ。


「――いや別に。怪我、ひどいですか?」


 治療ちりょうに集中するロッド先輩の代わりに、イリアが遠慮えんりょがちに言う。


「い、いえ……大したことは無いのですが」


 う~ん、視線で言ってんなぁ……「助けて下さい」って。

 それにしても、急に過保護になったな……ロッド先輩。

 イリアが冒険者を目指すことを認めた、って……言ってたもんな。





 今から十数日前……それはまだ五月の事だった。


『はぁ?――なにそれどういう状況?』


 俺が部屋の扉を開け、訪問者に対面すると……クラウ姉さんとイリアがいた。

 うん、その通り。バリバリ男子寮だよ。


『あれ、ミーティア?』


 二人の後ろには、申し訳なさそうなミーティアが立っていた。

 あれ……そう言えば、今日出て行った時はトレイダだったよな?

 普通にクラウ姉さんといるじゃん……どういう事だ?


『いいから部屋に入れなさいミオ。誰か来たら面倒でしょ』


 それはそうだけどさ……もう面倒なんだけど。


『――なに?』


 う……にらまれたんだが。


『いえ……どうぞ』


 クラウ姉さんに言い返せるわけも無く、俺は三人を部屋に招く。

 いや……ミーティアもそんなに縮こまってるんじゃないよっ!君の部屋でもあるでしょうに。


『それでなにさ?三人そろって……』


 さ、流石さすがに四人はせまいな。

 まぁ、クラウ姉さんはどっかの隙間にでも――おっと何でもない。


『なんか一瞬イラっとしたけどまぁいいわ。キルネイリア』


 するどいんだよなぁ。


『あ、はい。私が説明しますね……ミオ』


『あ、うん』


 じゃあクラウ姉さんはいらなくない?って言うのは……空気読めてないよな。

 だから言わないけどさ……ってにらみ続けるの止めてくれよ!!


『今日はお話があって、クラウに魔法を使っていただき……男子寮まで来ました』


 クラウ姉さんの魔法?なんだ……?

 俺の知らない魔法か?


 俺の考えが顔に出ていたのか、クラウ姉さんが。


『――光を屈折くっせつさせて、姿を隠す魔法よ……最大三人まで隠れられるわ。それを試そうと思って、ミーティアにも変身を解いてもらったの』


 ああそうか……だから――ん?


『ミ、ミーティア……変身の事、クラウ姉さんに言ったのか?』


『う、うん……と言うかね、バレてたんだぁ……』


 あはは……と苦笑いを浮かべるミーティア。


『あぁ……』


 いや、もうあの時確定だろ。

 イリアをここにかくまった日、女子寮に行ったんだもんなミーティア。

 その時にクラウ姉さんに会ったって言ってたし、その後も何度か会ってたらしいからな。

 俺が依頼サポートから帰って来た時も、皆で話す……って言ってたもんな。

 なるほど……その話という事か。

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