4-125【長い一日を終えて】
◇長い一日を終えて◇
駆け付けた複数の教官に、私たちはめちゃくちゃ怒られました。
訓練場は半壊……いや、それ以上かもしれない。
確かに、それは怒られるわよね……クラウの放ったあの光の雨は、外にも影響を与えていたらしく、怒られて外に連れ出された私たちは、その惨状に言葉を失った。
人に被害が無かった事だけが、唯一の救いかもしれない。
「つ、疲れた……」
現在、私は自室……トレイダとして自室に戻って来た。
直ぐに【幻夢の腕輪】を解除して元に戻るが、ベッドに倒れる様に寝転んだ。
「クラウとイリア……平気かなぁ」
二人はあの後、私とは別に連れて行かれたの。
一部の教官は、ミーティア
事情を聴くため、バラバラにさせたんだと思う。
ロッド先輩と二人の取り巻きの先輩方も医務室に連れて行かれていたはずだけど……私だけが一人、個別だ。
おそらく、学園長と連絡が取れる教官が手を回したんだと思うけれど……本当にいいのかな、こんなので。
ふと寝返り、窓を見る。
カーテンも閉めず、魔法ランプも点けずに……外はもう真っ暗だった。
「……ミオ、まだかな」
小さく
今日は色々あった……クラウのおかげで、進展したことも沢山ある。
でも……ミオが居ない。
予定通りなら、夜には帰れるはずだと言っていたわよね。
早く、ミオに会いたい。
あれだけの事を言われたのに、結局……私は何も出来なかった。
クラウとの訓練も、その後のロッド先輩たちとの戦いも。
解決してくれたのは全てクラウだ……
「……はぁ……」
暗い部屋の中で、気持ちまで暗くなり始めた……その時だった。
ガチャ――っと、扉が開いた音が鳴った。
「――っ」
ミオが帰ってきたんだ……そう思って、私は直ぐに起き上がり。
身だしなみなんて一切考えずに、入口に向かう。
「ミオっ!」
やっぱりミオだ。
よかった、無事に帰って来てくれて。
「ミ――」
もう一度名を呼ぼうとした私は、その衝撃に思わず言葉を失った。
ミオが突然、私を……抱きしめたのだ。
「……ミオ?」
「ごめん――急に」
ぎゅう……っと、両手に込められた力は、今までのミオの優しさには無かった強さだった。
「ど、どうしたの……い、痛いよ?」
ミオの胸に抱かれて、左手は腰、右手は頭。
グッ――と引き付けられて、私はつい汗の臭いを気にしてしまう。
分からない。ミオはいったいどうして……――え?……震えて、る?
その込められた力は、決して乱暴なものじゃない。
不安、恐怖……悲しみ。
そんな感情が
今にも押しつぶされてしまいそうな……そんな風に、私は感じた。
「――ミーティア。俺は……君を守るよ」
「何か……あったの?」
依頼先で、何か辛い事があったのね……こんなにも、震えるくらいに。
「俺は……皆を守れるくらい、強くなるよ。ミーティアを、危険な目にはあわせない……約束するから」
力の入る身体から
その想いをそのままぶつけられたような、今までのミオが隠して来ていたような強い想いを……見せてくれたような気がした。
だから、私はそのまま想いを返そう……思っている事を、そのまま。
「うん……大丈夫よ、私は
私も色々あったけれど、ミオにも、ここまでさせる何かがあった。
抑えていた想いをぶつける程の何かが……ミオを変えたんだ。
私は抱き返す。
優しく、背に手を当てて……ゆっくりと
「大丈夫。大丈夫よ……安心して、ね?」
寂しさ?不安?怯え?恐怖?
様々に絡まる複雑な感情をぶつけられて、私は。
初めてミオを、年相応の少年だったのだと……実感したのだった。
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