4-115【光の雨2】



◇光の雨2◇


 あれほどの加速をしていたのに、すべるように地面にれるのではなく……私は、叩きつけられた・・・・・・・


「がはっ……!!」


 全身に衝撃。


 う、動かない……いや、動けない?

 先ほどは足が、今度は身体全体が……重い。

 翼まで地面にぺたりと張り付いているようだった……動かせないっ!


「こ、れはっ……重力・・?」


 きっとそうだ。足を重くしたのも翼を重くしたのも、重力をかけられたんだ。

 範囲はこの長髪の男の周り……くっ、だから追ってこなかったのね。


「いい気味だぜっ……俺の依頼を断りやがってよぉ!クラウ・スクルーズ!!」


「……何、の事よ」


 顔が上げられない。

 上から言葉を掛けてくるけど、顔も見えないわよ。


「こっちを見ろよ!このチビ女っ!」


 ああ?今なんつった――?

 さっきも言ったわよね!?

 ちゃんと聞こえてんだからねっ!!


「ぐ、ぐぐ……ぐぅ!」


「――なっ」


 腹立たしい男……!依頼を断ったって言った?

 なら……こっちにだって選ぶ権利はあるのよっ!

 どうせろくでもない依頼で私に依頼してきたんじゃないの!?


 そんなことで逆恨みされて、この戦いで私怨しえんを晴らそうとしている馬鹿な考えだってんなら……その考えごと――ぶっ飛ばすわよっっ!!


「な……なぜ立てるっ!?【墜堕ついだの腕輪】の効果は、ロッドさんの血で強化されているってのにっ!」


「知ったことじゃない……自分の力で立ち向かわないような奴に、負ける訳ないでしょっ!」


 私は無理矢理にでも翼を広げて、【クラウソラス】を振るう。


「うおっ……このっ!」


 私のにぶい動きの攻撃をけ、男は反撃をする。

 しかし、その瞬間――重力が戻った。


「――ディルザ!よせ!!作戦通りに動くんだ!」


 ロッド先輩が後方から口を出すが、もう遅い。


「――【結晶剣クリスタル】!!」


 長髪の男が、攻撃をしようとした瞬間に重力が戻った……という事は、きっと攻防同時には使えないという事だ。

 私は【クラウソラス】を実体剣に切り替え、男の攻撃を受け止める。


 ガギン――!!


 振り下ろされた剣を、【クラウソラス・クリスタル】で受ける。


「くははははっ!【墜堕ついだの腕輪】!」


 しかし、その瞬間には再び重力が。


「ぐっ――!!この……」


 狙ったのか……剣の重さを、重力で!!


「おらぁ!そのいけ好かねぇ顔をっ!傷だらけにしてやんよぉ!!」


 重い……身体も、この男の剣も。

 鍔迫つばぜり合いは分が悪い、しかも重力でいきおいが増して……


「つっ……」


 押しこまれて、剣がほほに触れる。


「おら!おら!おらぁ!!」


 うるさい……わねっ!!


「……【クラウソラス】!!」


 私は【結晶剣クリスタル】を解除して、実体を持たない【クラウソラス】に戻して、相手の剣が当たる直前に……前に飛び込む。

 重力で更に加速して、一気に地面に向かった。


「――なっ!!」


 空振からぶり。長髪の男の剣は、地面に叩きつけられた。

 そして私は、倒れ込みながらも【クラウソラス】を振るう。


「ぎっ……!!」


 れ違いざまに……胴を一閃。

 これで、精神ダメージは相当入った時はずだ。


 私はどさりと倒れ込むが、もう重力は消えていた。

 すぐに起き上がり、男を見る。


 両膝を着いて項垂うなだれながら、下を向く長髪の男。

 私はその背中を、思い切り蹴った。


 ドゴス――!


 ぐらぁっ――と、長髪の男は顔面から倒れた。

 もう動かない。動くな!


「……さぁ、あと一人ですね……先輩」


 息をき、私はようやくロッド・クレザース先輩の顔を見る。

 その顔は怒りか……それともあせりか。

 指導という名の戦いは……もうすぐ、決着がつく。

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