4-112【クレザースの血7】



◇クレザースの血7◇


 【貫線光レイ】は魔力のかたまりよ、人体は貫通かんつうするわ。

 壁のように前に出て、ロッド先輩をかばおうったって、何の意味も無い!


 しかし、そう思っていた私の予測は……軽々と吹っ飛ばされる。

 その男の言葉によって。


「――【鏡霧きょうむの盾】!!」


「……なっ」


 私の攻撃を前に、取り巻きの一人が叫んだ。

 右手に持っていた小さな何か・・を、迫る魔力の前にかざすと、そのまま【貫線光レイ】が直撃。


 パシューーーーーーン――!!


「!」


 消えた!?

 いや……消された!


「くくっ……効かないんだよ、そんな魔法はなぁ」


 なるほどね……さっき、この三人が来る前も【貫線光レイ】を消されたと思ったけど、これだったのか……遠くて分からなかったわ。

 でも、それなら他にやりようがあるっ!


「――ならっ、近づいてっ!!」


 一瞬にして加速する。

 私の武器であるスピードで、直接かく乱して……斬る!


「は、はえぇ!?」


「――目で追うな!魔力で感じろ!!」


 取り巻きのもう一人が慌てるが、ロッド先輩が冷静になれと声をかける。

 この男……指示は出来るみたいね。


「遅いっ!」


 反応にぶく、男の眼前がんぜんまで一気に迫った私は、下方から斬り上げようと【クラウソラス】を振るおうとした。


 しかし――突然。


「――なっ!」


 ガクン――と、私はひざから崩れた。


 ザザッと地面を鳴らして、何とか踏みとどまるが、しかし男はその隙を見逃さずに、反撃をする。


「おらよぉぉぉっ!」


「くっ……」


 ひざを着き体勢を崩した私は、不格好に飛び込んでける。

 ごろりと受け身を取り、立ち上がる。


「……」

(楽になった……?)


 少し距離を取ると、ひざに来た重さが無くなっていた。

 身体も元通りに動く……いったい何だったの?


「……」


 相手三人を見る。


 しかし、来ない……三人共が積極的に攻撃してこないのは何故なぜ

 一つの可能性としては、確実にロッド先輩を守る為だけど。

 陣形を主とする戦法は私も学んだ。

 だけど、対集団戦のような戦法を……私一人に取る理由はなに?


 くっ……考えても時間を浪費ろうひするだけだわ。

 今は少しでも多く動いて、まずは一人を倒す!


「ふっ……!」


 短く息をき、飛び出す。

 走りながら、私は【貫線光レイ】を撃つ、二度三度、ロッド先輩に向けてだ。

 しかし先程の男がまた割って入り、右手をかざすと。


 パシューーン!パシュン!!パシューーーーーーン――!!


 全ての光線が搔き消された。

 不愉快ふゆかいな音を鳴らして。


「そのっ!!この……トサカ頭!」


 厄介やっかいだ。


 まずは、あのトサカ頭の取り巻きを潰す!!

 私がトサカ頭と言った男は、その手鏡のような物を私に向け続け、いつでも魔法を止められるようにしていると分かった。

 なら接近して、と思うのだが……


 ズン――


「ぐっ……またっ!」


 接近をすれば、身体が急激に重くなり……私の武器スピードが完全に殺される。

 またもガクリとひざを着く私の動きを予測したのか、すでに目の前ににもう一人……長髪の取り巻きが、ムカつく顔で私を見下ろしていた。


(マズい……間に合わない!!)


 そう思った瞬間には、その男の足が――私の腹にめり込んだのだった。

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