4-111【クレザースの血6】
◇クレザースの血6◇
クラウが訓練場の中央に向かって行く。
私は何も言えなかった……気が利くことも、自分も一緒に戦うと言い出すことも。
彼女に、何一つ言えない。
送り出す事しか出来ない、ミオの時も……今も。
「……イリア。【クレザースの血】って言うのは、そこまで凄いもの?」
少しでも知っておきたい。
「はい。単体では無意味ですが、魔力の
「なるほど……前回の依頼の時に、あなたが荷物をたくさん
この前の依頼サポートの時に、イリアは異常なまでの荷物を持たされていた。
その中身が……魔法の道具だったという事ね。
「はい、あの中は大量の魔法の道具が入っていました。【クレザースの血】は、魔力に作用して、その効能を高めるのです。私にも同じ血が流れているというのに使えないなんて、情けない話ですが……」
そんな事はないと思うわ。
イリアは戦っている、その血と向き合って。
力が思うように使えなくても、ご両親の
きっとクラウもそう思ったから、ミオに共感したからこそ、こうして手助けしてくれているんだと私は思う。
だからせめて、私は見届けないといけない……ここにいない、ミオの代わりに。
◇
三人は
茶髪の青年貴族、ロッド・クレザース先輩。
取り巻きの二人も、
「お待たせしましたか?」
ロッド先輩は、ニヤニヤしながら答える。
また
「――いいや。それにしても面白いな、君は……クラウ・スクルーズ。あんな失敗作の為に、そこまでする必要はあるのか?」
いちいち腹立たしい事を言うわね。
でも、私はそんな事でキレたりしないわよ。
「それは人によるでしょうね、私のように物好きもいるという事ですよ」
私は笑って言ってやる。
どう、生意気な顔でしょう?
「はっはっは!それはいいっ!!物好きな女は嫌いじゃないんだよ、精々……見世物でも楽しませてもらおうかなぁ!」
「がはははは!」
「わははっ!」
薄羽のように軽い口ね……本当に嫌になるわ。
「そうさせてもらいますよ。では……始めましょうか、先輩」
「ああ、お前ら……頼んだぞ?キルネイリアに分からせるんだ、あいつには何も出来ないんだとなぁ!!」
この状況でもキルネイリアの名を出すの?何の意味が……相手を
ロッド先輩の不可解な発言に、私は眉を寄せるが、もうそんな事を考える余裕も無くなった。
「――おらぁぁっ!!」
取り巻きの男が、先制を仕掛けてきたからだ。
でも、予測は出来ていたし……攻撃も単調、簡単に
私は横に跳び、その後は後方に下がりながら攻撃を
数度の攻撃を全て回避し、着地するが。
「……?」
追ってこない?
取り巻きの男は、私を追ってこなかった。
適度な距離を保つつもりなの?それとも他に何か、別の?
ロッド先輩の盾になるように、男二人は私に向いている。
ならば、試してみましょうか。
「――【クラウソラス】!」
ここで初めて、私が剣を取る。
精神や魔力にダメージを与える、通常の【クラウソラス】だ。
光の剣の切っ先をロッド先輩に向けて。
「【
魔力の光線、光属性の魔法。
しかし、それを予期していたのか……取り巻きの男の一人が前に出て来て。
「無駄よ、
ニヤリと笑う取り巻きの男は、命中する直前に手を
その手には、何か小さなものが
その小さな物を、男は……
ダメージを受けるだなんて、初めから思ってもいない様に。
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