4-94【サミダーク2】



◇サミダーク2◇


 女性に卵を産み付ける魔物、【サミダーク】。

 半魚人であるってことは……まぁそう言う事なんだろう。

 【ガルパー湖】の奥地である湿地帯しっちたいまで来た俺たちは、グレンのオッサンが準備をしている間、ずっと周囲警戒をしていたのだが、ふと気になって。


「あの、レイナ先輩」


「なぁに~?」


 ご自慢の槍を杖代わりにして、身体を預けているレイナ先輩。


「その……【サミダーク】のような魔物って結構いるんですか?」


「どういう意味?」


「……えっと。エ――じゃなくて、いやらしい事をして来る魔物って事ですけど……」


 あっぶねぇ。エロ攻撃って言う所だった。

 俺が失言しそうになったことに気付かないでくれたレイナ先輩は、答えてくれる。


「あ~……うん。結構あるみたいだよ、特に駆け出しの冒険者なんかはさ。ましてや、冒険者学校で勉強もせずに、フリーで冒険者になった女の子とかは、さ。【ゴブリン】とか【オーク】とか……それこそ【サミダーク】みたいなね」


 ド定番かよ。え?定番?

 俺はそっち系・・・・詳しくないけど……定番、だよな?偏見へんけんか?

 勝手なイメージかもしれないけど……「くっ殺」みたいなさ。

 RPGとかでは、普通にザコ敵なパターンが多いイメージだけど、やっぱり違うんだな。


「それでも冒険者になるんですね……」


「ま、お金になるからねぇ~」


 得物えものの槍をみがき始めるなレイナ先輩。

 その発言の後だと、相当なものですね……その槍。

 しかし、レイナ先輩は嫌そうにしつつも続ける。


「そういえば……三年の先輩も、そういうことをされたって言ってたよ……聞いた時は、悲しかったなぁ。でも、今は防止する魔法やアイテムがあるから……昔よりは被害が減ったんだよ~?」


「そうなんですか……」


 やっぱり、嫌な意味でリアルな異世界だったな、この世界。

 ミーティアやクラウ姉さんも、それを知ってんのかな?


 近しい女性の心配をする俺に、準備を終えたオッサンが。


「――男だって安心は出来ねぇぞ。ガキもしっかりケツを守っとけよ?」


 おい。それ以上言うなよ。


「【サミダーク】は男女の区別なく繁殖行為をしようとするからな、ケツだけは死守だ」


「――言うんじゃねぇよ……」


 俺はガックリと肩を落とす。

 男だって無関係じゃない、トラウマを植え付けられるのは同じなようだ。


 しかし俺は、気持ちを切り替えて、オッサンを追及するように言う。


「いや、それはもういいよっ!それよりもだ、オッサンはもう準備いいのか!?」


「おう。後は沼に近づいて、【サミダーク】を……おっ!ほれ、早速一匹いるぞ?」


「え――」

「ひっ!」


 沼地から、青色のうろこまとった腕が見えた。

 背丈は人間の成人男性よりも大きく、上半身は屈強で下半身は貧弱。

 ひれと尾があり、顔は完全に魚だ。


「あれは魚人だわ……」


 納得だ。


「よ~し、ガキども……しっかり観察させろよ~。あ、おいガキ。殺すなよ?消えちまうからなっ!」


「分かってますよ」


 目的は、【サミダーク】の生態調査だ。

 俺とレイナ先輩の役目は、観察するオッサンの護衛。

 つまり、他の魔物に襲われない様にすればいいのだ。


「ミオくん……周囲警戒ね」


「了解です。他の魔物は――」


「倒していい。でも静かにね、【サミダーク】が逃げちゃうから」


「分かりました、気を付けます」


 こうして、男も女も容赦なく襲ってくる性的な魔物……半魚人、【サミダーク】の調査が始まった。

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