4-92【ミオの戦い方】



◇ミオの戦い方◇


 【ガルパー湖】の奥地を目指す俺たち三人は、俺を先頭にして順調に進んでいる……と言ってもいいだろう。


「――【石の槍ストーンスピア】!!」


 この道のりは、三人で歩くにはせまかったのだが、歩きでの移動しか出来ない状況で、先頭の俺は二人の視線を背中に受けながら戦う。


 そこら辺に落ちている石を拾い、貫通力を最大まで上昇させて、極細の槍を作る。

 槍と言っても、見た目は槍というよりは完全に針だけどさ。


 それでも、敵が気付かない内に一撃で命をり取るのだ。

 魔物からすればかなりの恐怖だろう。


「「……」」


 かれこれ数度かな、まともな戦闘なんかしないで目的地を目指す。

 ふふふ……これは楽でいいだろ?格好つける真似なんかしないよ、効率重視だ。

 魔物は全て俺が倒しているし、能力――【強奪ごうだつ】で、高レベルの素材も落ちているから、レイナ先輩も文句はないだろう。

 なんたって……依頼の失敗続きで金欠らしいからな。


「かぁ~……すっげぇ魔法だな。まるで暗殺者だ」


「で、ですよね……」


 後ろから聞こえる言葉は、おおよそ褒めている様には聞こえないものだが、俺にとってはそれでもいい……別に、今回は俺の高評価など関係ないんだからな。


 中難易度の依頼成功+レイナ先輩の評価、二~三点でいいさ。

 最大の目的は、グレンのオッサンに俺が戦えることを知らしめることだ。

 それこそ……A級の冒険者でもおどろくほどのな。


 だから、俺は全力で戦う所存しょぞんだ。

 能力だって惜しみなく使うつもりだし、展開によっては【破壊はかい】だって使う。


「ん?――おいガキ!上にもいるぞっ!」


 グレンのオッサンの言葉に、俺はうなずいて。


「了解っ!――【極光弾オーラショット】」


 オーラの意味は少し違うのだが、まぁニュアンスが伝わればいいんだ。

 本当の意味は俺だって知ってるよ、雰囲気ふんいきとかそう言うのだろ?

 でも、かっこよくないか?【極光弾オーラショット】。


「お~!ミオくん……そんなのも使えたんだね~」


 レイナ先輩は嬉しそうにする。

 新しいものを見た時は、そんな感じになるよな。


 空中にいた鳥獣型の魔物の腹部に、ドスン――!と当たってはじけた光のかたまり霧散むさんする。

 しかし、散った光はその一つ一つの粒子りゅうしがダメージとなり、鳥獣型の魔物を痙攣けいれんさせる。


 やがて動かなくなると、自然と落下。

 もう息はないはずだ、多分。


「うひゃ~!素材素材!」


「お!嬢ちゃん、羽だけはくれねぇか?ペンになるんだ」


勿論もちろんです~!ほかにも沢山あるんでっ!」


 魔物一匹から落ちる素材のドロップ率は、いい所で数パーセントらしい。

 それを考えれば、【強奪ごうだつ】で100パーセントドロップ。しかも高品質化となれば、まぁ……生きていくだけなら困らないくらいのチート能力だよ。


「おーい。そろそろ進もうぜ?……じゃなくて、進みませんか?」


「「あっ」」


 二人は落ちている素材を拾えるだけ拾っていくそうだ。

 目的忘れてませんかね?


「――ん、おいほらガキ!またカモ……じゃねぇ、魔物が来たぞ!倒せ倒せっ!」


 また来たカモに、オッサンは目をかがやかせて言う。


「オッサン……本音漏れてんぞ」


「いいから倒せっ!お前の豪運が俺の老後にかかってんだよ!!」


 もう本音駄々漏れだし、やっぱりあの時言ってた「金に困ってない」ってのは、見栄を張っていたんだな。

 そんなこんなで、俺はこうしてオッサンに言われるままに……魔物を次々と倒していったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る