4-83【クラウとミーティア2】



◇クラウとミーティア2◇


 ミーティアの夢……それは、独立して自分の店を持つ事。

 【クロスヴァーデン商会】をぐのではなく、自分の城を持ちたいというのだ。

 立派なこころざしだと思うわ……でも、冒険者学校に来てまでする事じゃないとも思う。

 いくら自分も戦えるという事を証明したいと言っても、そこまでする必要はないはずよ。


「ミーティアは、これからどうするの?まさか、今のまま男子寮で過ごすつもり?」


 男子しかいない場所で、あまりにも危険だ。


「そ、それは……」


 冒険者学校に通うのはいい。それは自由だから。

 でも、男子寮にいるのはミオの教育上よくはないし、何より姉としては許せない。


「ミオも駄目だめだって言っているのでしょう?」


「最初は、最初はねっ?でも、今は何も言わないのよ?それって、もう大丈夫って言ったようなものじゃない?」


 あせったように言うミーティア。

 きっと、追い出されると思ってるのね。

 首席とは言え、私にそこまでの権利は無いわよ。


「ミオに何かされたらどうするの?ミオだって男……たまに視線感じるでしょ?」


「――うっ」


 ほらね。ミオもいい子ぶるけど、健全な男子なんだから。

 というか、昔から私がちょっとエッ!な悪戯いたずらをしてたし、興味きょうみは持つでしょう。


 具体的な事はしてないし、私にも道徳と言うものがあるから、一線は超えてないけど。でも……今思えば、ひどい姉ね。


「せめて女子寮に来なさいよ。それこそ、あなたが寮に来た時の生徒……キルネイリア・ヴィタールの部屋が一人分空いているわよ?」


「――それだと、ミオとパートナーじゃなくなっちゃう!」


「相棒関係が全てじゃないわ。実際、ソロの生徒だっている。ユキナリ・フドウとか、キルネイリアだってそうでしょう?」


 本来、二人一組での行動が鉄則だったのが一年のルールだ。

 学びの一年は、そうして過ごす決まりなのだから。

 だが、そのルールをユキナリ・フドウがぶち壊したんだ。


「それは分かるけど……私はミオと」


 気持ちは分かるわよ。村にいたミオとの時間を埋めたいのでしょう?

 だから一緒にいたい――離れたくない。


「アイシアにリードされてるって思ってるの?」


「――っ」


 口元が引きった……図星ね。

 確かに、長い時間を一緒にいたアイシアが、時間だけで言えば有利だわ。

 しかも許婚いいなずけだなんて……私は反対だけど。


「幼馴染であり許婚いいなずけ……確かに、凄いわよね。約束されているようなものだわ」


「うぅ……」


 でも、日本にはこういう言葉がある。


「――幼馴染は負ける」


「え?」


「とある歴史の言葉よ。幼馴染は、そのつちかってきたものを壊される運命だって」


「な、なにそれ……」


 あるものはあるんだもの、仕方がない。

 元来、幼馴染は負けフラグ……しかし、そんなフラグをへし折ってくるような根性が、アイシアにはある。

 この定番がアイシアに適応てきおうされるかは知った事ではないが、哀しいけれど、日本では負けヒロインの定番なのだ……幼馴染という存在は。

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