4-84【クラウとミーティア3】



◇クラウとミーティア3◇


 弟の幼馴染であるアイシア・ロクッサ。

 その負けフラグを……勝手に立てる私、クラウ・スクルーズは言う。


「別にミーティアを応援する訳じゃないわよ?私にとっては、どちらも可愛い弟を奪おうとする敵だからっ」


「て、敵って……」


 だってそうでしょ?私がミーティアを応援する訳では無いわ。

 勿論もちろんアイシアだって応援しない。

 レイン姉さんはアイシアを、ママパパは両方を応援しているみたいだけれど、私にとっては両方敵なんだもの!


「そう……敵なのよ、私のミオは渡さない。私はブラコンだから」


「――本音を隠してっ!?」


 直球で言う私に、顔を赤らめて困惑するミーティア。ふふっ……可愛い。

 悪戯いたずら甲斐がいがあるわね。

 でも、これはミーティアへの挑戦だ……私からの。


「ほら――私は本音を言ったわよ、ミオは渡さないから。ミーティアはどうしたいの?」


 このまま“姉の嫌味”に負ける?それとも、立ち向かって越えていく?

 本音の中に見えるもの……それを見せて。


「……どうしたいって、私は――」


 ミーティアが視線をらした。

 その時点で、心が後ろ向きだよ……ミーティア。


「ならもういい。学校に報告するから」


「――まっ!待って!!」


 立ち上がろうとした私の手を、ミーティアがつかむ。

 分かるわよ……ミーティアにも理由があるのは。

 でも、それでは話にならないのよ。


 果たしたい目的がある、言えない理由がある。

 それは理解も出来るよ、私にだって言えない事は沢山ある。

 私の場合、話しても信じないようなたぐいの話だから意味はないけど、ミーティアの場合は違うでしょ?


「なに?」


「……お願い。クラウ、少しだけ待って!話すからっ!」


 必死な顔ね。

 でも、うん……それでいい。


「分かった。初めからそうしなさい……こっちは聞く気で来たんだから」


 まぁ、最初から報告なんてするつもりないんだけど。

 だって、ミオのマイナスになるような事……私がする訳ないでしょう?





 時間は刻々と過ぎていく。

 どれだけ待ったかしら……一人で葛藤かっとうして、百面相をするミーティア。

 珍しいわね、いつもはクール……というか冷静なのに。

 あれ……?もしかして、それほどまでに言えない事だったのかしら。


 気づいてしまったが、もう遅い。

 ミーティアは覚悟を決めたように息を吸い、そして。


「……私が冒険者学校に通うのは、商人として学ぶため。それは本当よ、対魔物クラスになったのは――ミ、ミオと一緒がいいからで、他の事も学べると思ったから……【幻夢の腕輪】を使って男子寮に入ったのは――ミオのそばにいたかったからで」


 話をしながら、ドンドン赤くなっていくミーティア。

 ねぇ、基本的にミオの事しか言ってない気がするんだけど……いいのそれで。


「ミーティアとトレイダって言う二人の新入生を作ってもらったのは、学校側に……べ、便宜べんぎはかってもらったからで……」


 視線を逸らすミーティア。


便宜べんぎ……ねぇ。具体的には?」


 あ、やば……これは聞かなくてもよかったかもしれない。

 は、反射的に聞いてしまったぁ……


「だ、男子寮のミオの部屋を一人にしてもらったりぃ……ミーティアが寮に入らなくてもいいようにしてもらったりぃ、トレイダとミーティアの成績を同一のものにしてもらったりぃ……とか?」


「……」


 私は目頭を押さえた……学校とズブズブじゃないのよ。

 あ~これはあれね。

 もし私が報告していても、揉み消される奴だわ。

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