4-82【クラウとミーティア1】
◇クラウとミーティア1◇
意外と簡単に正体を現した、ミーティア・クロスヴァーデン。
私にとっては、彼女はただの知人でしかない……そう思っていた。
でも……彼女の思いを知って、それは素敵なことだとも思った。
自分の弟を好いてくれるのだって、悪い気はしない……認めはしないけれど。
だから、彼女がここまでの行動をする理由を、知らなくては。
「……」
コーヒーのカップをソーサーに置き、一息つく私……クラウ。
確かな確証があったとは言え、あっさり出てくるという事は、そこまで重要な事じゃないようね……きっと、彼女には彼女の……なにか目的があるのでしょう。
私としても、それをとやかく言うつもりはないわ。
でも、ミオと同じ部屋だと言うのは頂けない。
それだけは許されない……姉として。
「それで、なんでミーティアは冒険者学校に来たのよ。変装までして」
この前、寮で顔を見せた時は倒れた生徒を休ませるとか言っていたけど、ミーティアが冒険者学校に在籍している事を知った時は確かに
首席の権限を使って調べた、一年生全生徒の名簿に名前を見つけたからだ。
その時は……「あぁなんか企んでるんだろうなぁ……」くらいにしか思わなかったけれど、ミーティアが寮にもいなければクラスにも顔出ししていない事が分かってからは……話をしなければと思っていた。
私も、首席である以上……やる事が多いのよね。
「なんでって、えっと……一つは勉強。一つは夢。一つは恋……かな」
「……欲張りね」
ミーティアが勉強をするのは、商人としてだろう。
冒険者学校に支援クラスがあるのだから、私も初めはそれが目的だと思ってたわよ……では、夢とはなに?恋……は、まぁミオで確定だけど。
「――そうかもね。私、将来独立するのが夢なの……立ち上げたいの、自分の店を」
【クロスヴァーデン商会】を
だからその勉強?でもそれだけなら、別に冒険者学校じゃなくてもいいわよね。
いくら支援クラスがあるとはいえ。
「なら、なんで冒険者学校?しかも対魔物クラスでしょ?」
そう、ミーティアの在籍するクラスも……トレイダと同じく対魔物クラスだ。
店を持ちたいのなら、せめて支援クラスだろうに。
「――私も戦えるの……待っているだけじゃない」
意思のある瞳だった。
ああ……ミーティアは気にしているのね。
あの時、村で起きた魔物襲撃の事を。
何も出来なかった事を。
「でも、ミオは信じろって言ったでしょ?」
「信じたわ、今も信じてる……でも、
もしかして、それが男装の理由?
「だからって、変装してまで……ミオには?」
「――バレたわ。わ、私のミスで……」
意外とドジなのよね。
所で、
まるでなにか恥ずかしい目に遭った人みたいだけど。
普段は冷静で周囲も見えているけれど、意外な所でドジをする。
はは~ん……きっと、お風呂とか着替えなんかでバレたに違いないわね。
「ミオにはなんて?」
「――絶対ダメって」
さ、
普通の男なら、すぐに狼になるでしょうに……と思うのは、私の
でも、ミーティアのような綺麗な子が……そうしてくれれば、確かに。
そう思えば、ミオの男としての信頼は大きい。
恋人からすれば、もっと積極的になって……と思われそうだけど。
「ミオはレイン姉さんのような人がタイプだから、手を出さないんじゃない?」
「――」
わぁ……あからさまに暗い顔に。
い、言いすぎたかしら。
でも、ここで
姉からの“嫌味の壁”を超えてみなさいよ、ミーティア。
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