4-80【それぞれの一日2】



◇それぞれの一日2◇


 ~クラウ~


 ミオの相棒である……トレイダ・スタイニーを喫茶店に呼び出した理由。

 それは、とある疑問をいだいたからだ。

 その疑問はもはや確信に近い。

 それを確かめる為、こうして二人きりで会っているのだ。


 数日前、依頼のサポートを終えた私は、相棒のラクサーヌと分かれて自由行動をしていた。

 そして、【ステラダ】の街で見かけたのよ……メイド服姿の、ミーティアを。


 本当にビックリだった。

 首席の私は、ある一定の権限を持っている。

 その過程で、ミーティアが学校にいる事を知った。

 知ったときは、然程おどろかなかった……クラスには支援クラスがある。

 勉強の為、もしくはミオの為に入学し……おどろかせようとしたのではないかと考えられたから。


 でも……そのお嬢様が、メイドになっているのだもの。


 私は【クラウソラス】の光魔法を使い、身体に光学迷彩をかけて尾行をした。

 光魔法――【光聖の衣シャインベール】。

 私が依頼のサポート中に取得した新魔法……試すには絶好の機会だったし。

 なにより気になった。


 ミーティアがメイドの恰好でそばにいるのは、貴族の青年だ。

 冒険者学校では見たことのない人物、だけど……髪色が同じ人物は知っていた。

 偶然か、それとも……


 ミーティアとその男性は、魔物図書と言う場所に向かっているようだった。

 もしこの男性がミーティアの相棒だったら、ミオはどう思うか。

 そう考えての行動だったが、その場にミオまでやって来た時はどうしようかとも思った。


 【光聖の衣シャインベール】の効果は物凄く、魔力まで完全に隠せた。

 その代わりに、異常なまでの魔力消費で……長居は出来なかった。

 念のためと離れていた事もあって話も聞けていないし、魔力が切れそうになって直ぐにその場を離れた。


 でも見た。貴族風の男性の腕に……ミオの相棒、トレイダ・スタイニーが着けていたものと同じ――その腕輪を。





 場所は戻って、喫茶店だ。

 目の前にいる中性的な少年……トレイダ・スタイニー。

 その腕には、あの時の貴族風の青年の物と同じ……腕輪。


「――その腕輪、流行はやっているの?」


「え?」


 彼は腕輪に手を這わせた。まるで隠すように。

 声のトーンも少し上がったわね……動揺?


「この前、同じものをしている男性を見たのよ。この子も、一緒に」


 トントンと、ミーティアの名前を叩いて言う。


「……ど、どうでしょうね。僕は貰ったんですよ……いやー運がよかったのかなー、あはは……」

(イ、イリアの事だわ。変身した姿を見られていたなんてっ)


 表情に変わりはない。

 ポーカーフェイスなのかしらね。あの子と同じく。


「――珍しいものに見えたけれど、ただの装飾ではないわよね?」


「えっと、どうでしたかね……何せ貰い物なもので」


 なるほど、知らぬ存ぜぬを通すつもりね……なら、これはどうかしら。


「へぇ……ところで私、あなたと同じ喋り方・・・・・をした子を知っているんだけど」


「……ぐ、偶然ですね。それは」


「ええ。私の弟――ミオの昔のしゃべり方にそっくりなのよ、今のあなたのしゃべり方」


「――!!」

(なっ……!?)


 さぁどう出る?私には確信があるのよ?

 何を考えて、どんな理想を目指しているの?


 ねぇ――ミーティア。

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