4-77【血筋の代償3】



◇血筋の代償3◇


 二人と合流をして、俺はまずイリアに謝罪した。

 勝手にイリアの事を話してしまったからな。


「――構いません。それで、その人……グレン・バルファート、でしたか。その人はなんと?」


「……あきらめさせろと言われたよ」


「当然ですね。ハーフなのですから……」


 それだけとは思えなかったけどな。


「でも、目指すことに対して他人が言える事では無いわ」


 ミーティアが言う。

 なるほど、自分も目指しているものがあるからだろう。

 きっと分かるんだ、イリアの気持ちが。


「そうだな。どこに行くか、何になりたいかなんて、誰かに決められるものじゃない。イリアは自分で選べるんだ……どこに向かって、何になりたいかを……自分でな」


 まるで、自分に言い聞かせているようだった。

 ド田舎に産まれて、農家の息子として生きてきた十数年、近年は村長の息子と呼ばれ始めていた俺が……なりたいもの。


 親に決められた道を歩いている、血にしたがって生きている。

 そんな事は、これからいくらでも変えていけるんだ。


「無理があったって、目指すだけならタダだ。夢を見るのは自由なんだよ……誰に何を言われようとも、あきらめない方がいい。自分が無理だって思うまで……信じればいいんだ」


「ミオ……うん、そうね」


 ミーティアも、俺の言葉を分かってくれる。


「ありがとう、ミオ……ミーティアも。私は信じる、自分を……その言葉を。冒険者になって、必ず【アルキレシィ】を――倒すわ。ハーフの血には負けない、自分自身になるために」


「……ああ、その意気さ」


 イリアの想いは本物だ。彼女が冒険者を目指せる時間は限られる。

 二年への進級試験。半年に一度行われるその試験で合格できなければ、準冒険者のライセンスは取得できない。

 そうなれば、【ギルド】からの依頼は受けられなくなり、彼女の未来は完全に閉ざされる。

 その為にも、サポート依頼をこなしてポイントを獲得し、試験を受けなければならないんだ。

 しかしイリアの場合……メイドとしての仕事もあるうえに、仕える相手が面倒なんだよな。


「――坊ちゃんが許してくれるように、私も最善を尽くします」


 ロッド先輩に関しては、それしかないかな……


「そうね。ロッド先輩がどう動くのか分からないから、慎重にね」


「ああ、そうだな」

「はい」


 そうして、魔物図書での調べ物は終わった。

 三人で外に出ると、もう夕日が出ていた。


「今日はありがとうございました。坊ちゃんに報告をして、自分の部屋に戻ろうと思います」


「大丈夫なのか?イリアを襲った奴も、まだ分からないんだぞ?」


「でも、連日戻らないのも怪しまれるわ……一度は戻っておかないと」


 ミーティアが言う。

 そうか……それもそうだよな。


 考える事も多いけど、イリアにはイリアのやる事もある。

 なら、俺に出来る事は何だろう。


 今……俺には一つの考えがある。

 ハーフのイリアでも、未来を切り開く方法だ。

 それが出来るのは、きっと俺だけだ……そして、その方法は――能力だ。

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