4-70【アルキレシィを調べよう2】



◇アルキレシィを調べよう2◇


 【ステラダ】には、主に三つの図書館が存在している。

 歴史、魔物、一般と分けられ、冒険者や冒険者学生がよくおとずれるのは当然、魔物図書館だ。


 歴史図書館には普通の学生や外国人が、一般図書館には子供や主婦などが多くおとずれるらしい。

 現在、俺は一人でその場所に向かっている。

 手書きの地図を持ってな。


「えっと……ここだな。魔物を調べる事が出来る場所は」


 ここに、すでにミーティアとイリアが居るはずだ。

 男子寮から、女子二人が安全に出ていく方法……俺が出した案は、【幻夢の腕輪】をもちいた変身での作戦だった。


 【幻夢の腕輪】を使わせるのはイリアで、いつもミーティアがやっているように、男性に変身してもらったよ。

 ちなみに、【幻夢の腕輪】を発動する際の魔力は俺が込めた……イリアじゃ、発動出来なかったんだよ。


 そしてミーティアには、イリアのメイド服を着てもらった。

 イリアには貴族の青年のように変身してもらい、ミーティアはそのメイド……と言った構図だな。

 寮を出る時も、別にメイドならいてもおかしくないだろうし。


 いる意味があるのか分からないような管理人には、俺が念の為に声を掛けたから、出ていく時の二人の姿ははっきりとは見えていないはず。

 変身したイリアは冒険者学校の貴族、ミーティアはそのメイドにしか見えない。

 管理人も上手く誤魔化ごまかせたよ。


「……どこだ?」


 俺は入館し、二人を探す。

 もう元に戻っててもいいはずなんだけど……出来ればメイド姿のミーティアをじっくりと見たい。

 え?私情……?仕方ないだろ、だって見たいんだから!


「あ。いた……」


 青髪のメイドさんが、そこには居た。

 胸がきつそうだけど……着る人でそこまで胸囲変わるんだな。

 それにしても、ひかえめでも目立つな……


 そして、黄緑の髪の青年貴族が椅子に座る。

 なんだかお似合いの雰囲気ふんいきに見えるのは気のせいだろうか。

 その青年貴族が、俺に気付く。


「こっちだよ、ミオ」


 イ、イリア……声までイケてるじゃないか。

 実に好青年だ。


「待たせたな。もう探してたか?」


「ええ。でも、中々少ないわね……」


 青髪のメイドさんが答える。

 【アルキレシィ】の情報を、俺が来る前から探し始めてくれていたようだが、結果はまだ出ていない……という事だ。


「そっか、それじゃあ……俺も探してくるよ――でさ、いつまでその恰好かっこうなんだ?」


 ちょっとした疑問だった。

 俺が来る前に、更衣室やトイレかどっかで着替えれたはずだしなぁ。

 そんな俺の疑問を、ミーティアは物凄い笑顔で言う。


「えへへ……だって、見たかったでしょ?私のメイド姿っ」


「――!」


 ひらひらとスカートをひらめかせて、くるりと一回転。

 この子は……本当に俺の心を読んでくるな。


「そ――そんなことにゃいからっ!」


 んだ。


 もうバレバレだったよ……俺は誤魔化ごまかすように背を向けて、魔物の情報がった本を探しに行く。

 もしかしたら、顔が真っ赤だったかもしれない。

 くそぅ……ミーティアは、いったいどこまで俺の考えを見透かしてたんだろうな……まったくさ。

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