4-69【アルキレシィを調べよう1】



◇アルキレシィを調べよう1◇


「う、う~~~~~ん。い、ててっ」


 翌朝目が覚めると、ありえないほど腰が痛かった。

 バキバキッ――と骨が鳴る。


「もう朝か……」


 俺の目が覚めた場所は……床だ。

 床で寝たよ、脱衣所の前の床でさ。


「……夜は、大変だったなぁ」


 イリアの話を聞き終えた後、俺はロッド先輩に報告に行ったんだ。

 流石さすがに、何も言わないのは怪しまれるしな。


 ロッド先輩の部屋は三階で、簡単に言うと貴族階だった。

 訓練でイリアと一緒になり、そのまま一緒に訓練をして、少し負傷したと報告した。

 普通、貴族に仕えるメイドに怪我をさせたとなると大変だろうけど、これは俺の思う通りに行ったんだ……ロッド先輩は、何も言わなかったんだよ。


 俺たちをのぞいていたんだから、知ってるもんな。

 本当は怪我なんてしてない事を、さ。

 それを、馬鹿みたいに正直に「怪我なんてしてないだろ!」と言ってしまえば、あの後もそこにいた事になる。


 本当はそう言ってくれれば、簡単に昨日ののぞき魔が特定できるとも考えたのだが、そこは乗ってこなかった。

 「分かった。怪我が治るまで休ませよう……」そう言って、イリアのメイドとしての仕事の休暇を認めたんだ。


「ミーティアも、あのあと女子寮に行ったんだよな……大丈夫だったのか?」


 そう、ミーティアも……一人で女子寮に報告に行ったんだ。

 イリアは女子寮で一人部屋だし、普段は関わっては来ないが寮母りょうぼさんもいる。

 寮母りょうぼさんには「外の実習で怪我をしたから、私の家で休んでいる」……そう言ったそうだ。


 俺が気になる……「大丈夫だったのか?」は、実はその後の話なんだけどな。


「ふわぁ~……おはよう、ミオ」


「ああ、おはよう」


 ミーティアは、帰りにクラウ姉さんと会ったらしい。

 詳しいことは教えてくれなかったが、それが逆に怖い。

 あの人……何かしでかしそうで。


「イリアは?」


「まだ眠ってるわね……普段、ぐっすり眠っていないのではない?」


 普段はメイドとしての仕事もあるからな。

 それに加えて、冒険者になろうと……いや、【アルキレシィ】と言う魔物を倒そうと必死になってきたえているんだ。


「さてと……今日から忙しいぞ?大丈夫か?」


「ええ、頑張るわ」


 むんっ――とマッスルポーズを取るミーティア。


「ははっ、なんだそれ」


 こうしてまた、一日が始まる。

 だけど不思議ふしぎと、自分の依頼サポートを頑張らなければいけない!という感覚は……なかったんだよな。


 あれだけ毎日、能力や魔物の事を考えていたのにさ。

 異常なまでに……身体も気持ちも、軽やかだった。

 き物が落ちたかのように。


「……【ステラダ】に、物を調べられる場所ってあるのか?この学校にはなかったけど」


 考えるべきは、【アルキレシィ】って獅子の魔物を調べる所からだ。

 流石さすがに情報が無さすぎる。

 いくらイリアが見ているからとはいえ四年前……しかも朧気おぼろげだからな。

 魔物の事を調べられるのなら、一度は行っておきたい。


「あるわよ?王都ほど大きくはないけど、図書館があるの。そこに行く?」


 ミーティアが言う。

 なるほど……魔物の図書館か、そいつは良い。


「ああ、行こう。案内してくれるか?」


「ええ、分かったわ。イリアはどうするの?」


 そこなんだよな。

 ロッド先輩には怪我をしてるって言っちゃってるし、連れ出す訳にも……


「――あ。それは?」


「え?」


 俺が指差すのは、ミーティアの腕に付けられた【幻夢の腕輪】だ。

 それは、ミーティアが……トレイダに変身する為の物であり、性別すら隠す事が出来る……魔法のアイテムだ。

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