4-71【アルキレシィを調べよう3】



◇アルキレシィを調べよう3◇


 俺は図書館二階に上がって、無数にある魔物の図鑑や、今までの冒険者の先人たちがまとめ情報がった本を手に取り、的確に調べていく。

 事前情報としては、まず希少種レアだという事だ。

 そして大きな身体に黒い獅子、角がある魔獣だな。

 俺の脳内では、キメラに近いのではないかと思っている。


「これは……っと」


 四足歩行の魔物がまとめられた本だが、どうだろうか。


「……狼型、馬型、獅子……はあるけど、黒獅子は、ないな」


 この前戦った【ディアウルフ】や、【パブロホース】という馬の魔物。

 それに【ガルノレオ】と言う獅子の魔物がっていた。

 獅子は獅子でも、黒くはないから違う……と。


「一体の魔物に数十ページも、何書く事あるんだよ……これ」


 とにかく細かい情報だが、今必要なのはそうじゃない。

 【アルキレシィ】……希少種レアの魔物なんだからな。


「珍しいって事は、それだけ情報は少ないんだろうけど……名前も目撃情報もあるんだから、無い事はないんだよな……絶対に」


 数冊目の本を閉じ、たなに戻す。

 それを数回行い、ふと下を見る。

 吹き抜けになっているこの図書館は、一階が丸見えである。


 黄緑の髪の青年と、青髪のメイドさん。

 二人が仲良さげに調べ物をしている……なんか、物凄くいい感じに見えるのは気のせいだろうか。

 いや――!分かってるよ。女の子同士なんだ、二人は女の子っ。


「……あぁ……ミーティア、可愛いなぁ」


 普段からああしていて欲しい。

 出来れば、女の子の姿で一緒に冒険したい。


「あ」


 ふと、作業から逃避している事に気付いて、首を振る。


「いかんいかん……調べ物に集中だ」


 下では、大きな机に二人で沢山の本を広げている。

 俺とは調べ方が違うんだよな……俺の調べ方は、情報をしぼってピンポイントに調べるタイプだ。


 一方で下の二人は、全てを虱潰しらみつぶして行くタイプだ。

 多分、ミーティアがイリアに合わせてるんだと思う。


「あっちはあっち、俺は俺だ……」


 こういう時に、異世界チート能力が欲しいと思ってしまうのは、なんとも都合のいい所だ……だがどうやら俺には、そんな便利な引き出し能力はないらしい。

 昨日探ってみたんだよ……前みたいに、心を静めてな。


 【感知かんち】のように、誰でも取得できる能力は他にもある。

 それこそ冒険者には必須のスキルが沢山だ。


 その中に、調べ物に適したチート能力もあるのだろうと思ってさ。

 でも……無かったよ、俺には……今は、な。

 「今は」……その理由として、もう一つ可能性がある……でもそれには時間が掛かるんだ。


 それは、俺の成長だ……もうすぐ十五になるが、俺の身体はまだ子供だ。

 能力のアンロック的なシステムがあるのなら、今は使えない可能性の能力もあると思うんだよ。

 【感知かんち】が魔力の成長に合わせて習得したのなら、きっとチート能力の中にもあるはずだ……成長によって覚える能力が。


 それ以外の能力……例えば【検索けんさく】なんて能力があるとして。

 多分、他の転生者が覚えてるんだろうな……と納得した。

 だって、千五百人いるんだろ?転生者。


「ならどうやって探すか……だけどな」


 “一度見たものを絶対に覚えられる”とかの能力があれば、こういう時は簡単なんだろうが……残念なことに、異世界はそんなに甘くなかったよ。

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