4-64【私の夢1】



◇私の夢1◇


 俺はあの場を後にし、シャワールームへ向かう。

 不審者にも、協力者と見られる妨害してきた奴にも逃げられて……精神的には最悪だった。


 いろんな場所を確認しながら、シャワールームの入口に着いたが……まぁいきなり入って行く訳にもいかないよな。

 俺が捕まりかねんぞ。


「ト……あーいや、ミーティア!!いるか!?」


 ついトレイダと言いそうになる。

 変身解除してんだもんな、危ない危ない。


 少し待つと、中から返事が返ってきた。


「――平気よ、入って来て」


「え」


 な、中に?シャワールームだぞ?女子の。

 しかし、考えているひまもない事は俺でも分かる。


「ええい……仕方ない――今行く!入りますよー!入るからね!!」


「――早く!」


「く……」


 急かされた。だって怖いだろ……女子のシャワールームに入るだなんて。

 しかし意を決して、俺は中に入っていく。造りは大体男性用と変わらないが……数が多いな。


「あ」


「こっちよ」


 ミーティアがいたが、水にれていた。

 そしてイリアも。


「――イリアっ!?」


「ミオ……すみません、ご迷惑を」


 ひとまずは良かった、無事なようで。

 これで怪我なんかしてたら、申し訳なさすぎる。


「いや、君が無事ならそれでいいさ……で、何があったんだ?」


 身体を強張らせて、イリアが言うが。

 これは……話せるか?


「シャワーを浴びていたら、急に腕をつかまれて。知らない人でした……声を上げたので逃げて行きましたが……そこに、このミーティアさんが来てくれて」


 うなずくミーティア。

 じゃあ、もしかしなくても……あの怪しい奴が。


「そっか。そいつは、黒ずくめ?」


「……はい」


 怯えた顔で、思い出したかのように身をすくめる。

 俺は……自分を殴りたくなった。

 やっぱり、あの黒ずくめが犯人だったんだ。

 みすみす逃がして……くそっ。


「ミオ?」


「あ、いや……それで、心当たりは?」


 今、ミーティアとイリアは床に座っている。

 そしてふと気づく、会話を出来る場所じゃないよ……ここは。


「……話す前に、場所を変えるか。ここじゃあ、誰か来たらマズイからな。主に俺が」


「そ、そうね」


「……はい」


 そう言って、俺とミーティアはイリアを立たせ外に出る。

 さて……どこへ行こうか。

 身体と心を休めて、ゆっくり話せる場所がいいが。


「ミオ。私たちの部屋に行きましょう……今なら、人もいないわ」


「え……でも、いいのか?」


 二つの意味でな。

 女の子を、男子寮に連れて行っていいのか?

 そして、ミーティアはいいのか?


「いいわ。このままでは、イリアが可哀想かわいそうだもの」


「……分かったよ。ミーティアが言うなら」


 そこまでしてくれるんだ。

 それならきっと、イリアも分かってくれる。


「――イリア。俺たち・・の部屋に行こう」


「え?」


 俺たち・・――そしているのは俺と……青髪の美女。

 二人を交互に見渡して、イリアは。


「ま、まさか……あなたはトレイダなのですか?」


「……ええ。こっちが本当の姿なの、その……訳アリで」


 ミーティアは言う。

 その訳ってのは、俺も知らないやつなのかな?


「……分かりました、今は何も聞きません。私も……混乱してしまっていますから」


「ええ。助かるわ……それじゃあ、行きましょうミオ」


「ああ……そうしよう」


 色々と考えなければいけない。

 話し合わなければいけない事もある……しっかりしないと。

 俺たち三人は、周囲に警戒しながらも……男子寮に向かうのだった。

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