4-45【ナスタール森林地帯1】



◇ナスタール森林地帯1◇


 【ステラダ】の西に位置する森……【ナスタール森林地帯】。

 俺とトレイダの冒険者学校一年生は、二年生の先輩、レイナ・ハブスンさんのサポーターとして、彼女の依頼を補助するのが役目だ。


 準冒険者のライセンスを取得した二年生は、単独で依頼を受けられるようになる。

 その補助という名目の、まぁお勉強だよな。


「と、遠いね……やっぱり歩きだと」


「そうだな。村にいる頃も、こういった移動が多かったから気にはならないけど、トレイダは平気か?」


 正直、こういう移動……俺は全然余裕だ。

 ド田舎の広い土地で遊んでたんで。


「あはは……うん。まだ平気だよ」


 中継地点であるキャンプ場までは、数時間かかる。

 ゆっくりとは言え、魔物だって出るからな。

 ミーティアはトレイダに変身しているが、体力などは変わらないらしいから、一般的な女性と変わらないんだ。

 頑張り屋なのは分かるけど……無理だけはしないで欲しいな。


「……」


 それに、後ろからの視線も気になるんだよ。

 二年生は、準冒険者のライセンスを取得して依頼を受ける。

 そうして依頼をこなし、三年生を目指すんだ。


 つまり一年生は、足を引っ張れないんだよな……先輩の。


「……レイナ先輩。なんですか?」


 俺は後ろからの視線に耐えられず、声を掛ける。


「……二人は、付き合ってるのかな?」


「――は、はい?」

「ええええっ!?」


 何言ってんだこの人。


「いや、だってさぁ……なんだか距離が近いし、男同士なのに……別に男同士が駄目だめな訳じゃないけど、若いのにオープンなんだなぁって思ってね~」


 そ、そういう事かぁぁぁぁ!!

 普通に距離が近かった!心配しすぎておかしかったな今思えば!


 し、しかし……もう後には引けん!!


「そ、そりゃ、友達・・ですからねっ!仲は良いに決まってますよ!なぁトレイダっ!」


 俺はトレイダの肩をガッツリ引き寄せて言う。


「……うん。そだね……」


 ええぇ!?なんでそんなに不満そうなんだよっ。

 ここはそうでもしないと怪しまれるぞ、ミーティア。

 つーかレイナ先輩、付き合ってる?って……やっぱりそういう文化はどこにでもあるんだな。

 むしろ、時代的に多いのか?俺の周りにいなかっただけで。


「そっか。二人の間に割り込んじゃったかなって、ちょっと不安になっちったんだよね~」


 無垢むくな笑顔でそんなことを言うのはやめてくれ。

 そんな百合の間にはさまる男のような発想。死ぬぞ?


「そうですよ……あはは」


「……」


 ミーティアもやめてくれ、そんな目で見ないでくれよ。

 別にミーティアの事を言ってるんじゃないから。

 トレイダの事を言ってるんだからな?


「さ、さぁ先に進みましょう。夕方までにはキャンプをしないと危ないですよ」


「そ~だね。いっそご~!」


 つ、疲れた。体力的には全然平気なのにな。

 冷静に考えたら、男は俺だけなんだよな。

 そう考えたら……キャンプ、急に不安なんだが。

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