4-33【ミーティア潜入作戦2】



◇ミーティア潜入作戦2◇


 トレイダ・スタイニー……ではなく、ミーティア・クロスヴァーデン。

 彼女は俺に説明をする。


 なるほどねー。

 その【幻夢の腕輪】って言う伝説級のアイテムを使って、新入生として入り込んだわけか。


「でも、それって大丈夫なのか?」


「学校側には許可を取ったの。私は正真正銘の新入生……ミオの同級生よっ!」


 せ、正式に冒険者学校に入ったのか!?

 なんでそこまでする必要があるんだよ。


「そ、それはいいとしよう、この際だ。でも、ここは男子寮だぞ!?」


「学校側にはね……ミーティア・クロスヴァーデンとして入学しているの。でも、女子寮の部屋が開いてなくて……だから、ジルリーネに頼んで……」


 ジルさんに?あの人なんの権限けんげん持ってんの!?

 しかも、アイテムで変身してまで男子寮に?危なすぎるって。


「――バ、バカ!俺以外が相部屋だったらどうすんだよっ!」


 俺はつい、もしもの事態を想像して叫ぶ。


「……ご、ごめんなさい。でも、部屋はミオとだってわかっていたからで」


 そういう問題じゃないんだって。


「もしかして、これから三年間、こういう生活をするつもりなのか?」


「……うん」


 俺は頭をかかえた。文字通りに。

 どうやら、三年間バレないようにトレイダとしてやっていこうとしたらしい。


「学校側が許可をしているのなら、生徒としてはいいんだろうけど……部屋が同じなのは……絶対に駄目だめだよ。第一、ミーティアには【ステラダここ】に家があるじゃないか」


「そうだけど……やっぱり通うなら、寮かなって」


 ミーティアは、出会った頃から行動力が凄い。

 でもまさか、ここまでするとは。


「――冒険者になるつもりなのか?」


 そう、問題はそこだ。

 ここ【王立冒険者学校・クルセイダー】は、冒険者を育てる学校だ。

 ミーティアは、冒険者になるつもりなのか?


「え、違うわよ?」


 めっちゃ意外そうに言われた。


「……?」


「この学校はね、冒険者と言っても様々なのよ……クラウのようにライセンスを取得したい人、ミオのように勉強しようとする人……それと、商人や鍛冶師・・・・・・もいるのよ?」


 商人、それに鍛冶師かじしか。

 職業ジョブ学校、みたいな事か?


「それじゃあ、ミーティアは商人の勉強を?」


「……そうね。私も、まだまだ若輩者じゃくはいものだから。商人としてもだけど……私は、ミオの……」


「ん?」


「――秘密っ!」


 なんで!


「それじゃあ話にならないって……ミーティア、商人やそれ以外にも学べるのは分かったけど、実習とかはどうするんだよ。まさか、トレイダのまま出るつもりなのか?」


 トレイダとしてのあつかいはどうなっているんだ?

 ここ数日、ずっと毎日一緒だったけど……ミーティアだったと気付いたら急に恥ずかしくなって来たんだが……俺、変な事してないよな?


「ええ。勿論もちろんよっ……弓だって得意だし、魔法だって使えるのよ?」


 ミーティアは飾ってある弓を手に取って、見せる。

 確か……【魔導弓】だったっけ。

 魔力で操作して、矢の威力を上げる事が出来るんだったな。


「……そうなの?魔法も?」


 あ、そう言えばジルさんが言ってたな。

 お嬢様は学園を成績一位で卒業したって……それって、戦闘技能とかもふくまれてるのか?


「うん。だから……頑張ろうねっ、ミオ!!」


 冒険者学校に通うのはいい。それは自由だから止められない。

 同級生なのもいい。同じタイミングだってだけだからな。

 でも同室は駄目だめだろ……ミーティア。

 ミーティアが良くてもさ、俺が持たないよ……色んな意味で。

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