4-26【新入生歓迎会1】



◇新入生歓迎会1◇


 三月も終盤に入り、一年生同士の入寮の挨拶あいさつの後日。

 休む間もなく、新入生の歓迎会が行われた。


 場所は校内にもうけられた大広間だった。

 まぁ、パーティー会場のような場所に近いかな。

 取り仕切っているのは二年生の先輩で、俺たち一年生はただいるだけ。

 飲み食いをして、顔を見せる程度だな。


「――ミオ」


 ん……?


「……ああ。クラウ姉さん」


 俺のそばに来たクラウ姉さんは、なんだかゲッソリとしていた。

 俺には分かる、これはうんざりしているんだ。


 疲れた顔しちゃってさ。

 クラウ姉さんは、先程からいろいろな人に囲まれていた。

 同級生や先輩方……その人たちからすれば、うんざりしているクラウ姉さんの顔も、はかなげに見えているんだろうな。


「――つ、疲れた」


「ご苦労様。ほら、椅子に座りな?」


 俺は、ぐったりのクラウ姉さんを椅子に座らせて、肩を揉む。


「あ~……胸が重いからこるわ~」


 うそつけこら。五年位前から変わってねぇだろ。

 でも、こってるのは確かだ。疲れだろうな。


「――で、どうだった?先輩たちからの歓迎は」


「……疲れるだけよ。でも、強そうな人もいるわね」


 お疲れの姉の肩を揉みながら、俺は納得したように言う。


「だろうね。世界中から集まっているんでしょ?冒険者になりたい人……しかも」


 周りを見渡す。

 俺たち新入生だけでも、結構な年齢層だ。


 下は今年で十五歳……上は五十三歳だってさ。

 そうだよ、俺が最年少だ。


 去年は十歳の天才ちゃんがいたらしいけど、今年は俺が最年少って訳だ。

 そしてクラウ姉さんが……今年度の首席代表だ。

 これが、お疲れの理由だな。


「クラウ姉さんは首席に選ばれてるしね。注目されてるんだよ」


「試験官が弱すぎたのよ」


「……そ、そんな事は」


 三日前、新入生全体で実戦試験が行われたんだよ。

 そこでクラウ姉さんは、なんと満点を出した。

 文句なしに、今年度のトップだ。


 ちなみに俺は十三位。

 普通に頑張ったんだけどさ……なんか、俺の能力(魔法と言う“てい”)は……戦闘向きじゃないんだとさ。

 そんなの、俺が一番知ってるっつーの。

 それでも十三位に入れたのは、【カラドボルグ】による剣技と、身体能力の審査しんさで上位だったからだ。

 能力をめられると思ったんだけど……やっぱり冒険者学校だな。

 対魔物、対犯罪者、対軍人……その全て、クラウ姉さんは一位だ。


「……力を抑えてあれ・・なんだから、加減が難しいのよね」


 クラウ姉さんは試験官を、【クラウソラス】で全員……昏倒こんとうさせたのだ。

 試験もクソもないっての。


「それは俺も同じだって。俺はしっかりと抑えたんだから……」


 【カラドボルグ】の力は、触れる直前から相手を切りくのだ。

 魔力でおおう事で、なんとか切れ味を抑えたんだけど。


 そのせいでさ、【金ぴかの剣を持つイケメン】……って呼ばれたんだぞ。

 イケメンはいいとしても、どこの道楽貴族だよっ!!


「ミオはいいわよねぇ。私なんてそのせいで――【暗殺者アサシン】って呼ばれてるのよ?殺しても無いのにさぁ」


「……」


 カッコいいじゃん!【暗殺者アサシン】カッコいいじゃんか!!

 【金ぴかの剣を持つイケメン】だぞ!?イケメンはいいよ、嬉しいよ!


 だけどまぁ……確かにあの時の会場は異常だった。

 クラウ姉さん以外の人……全員ぶっ倒れてんだもん。

 下手すりゃ、死んでてもおかしくないわ。

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