【冒険者学校】入学編

4-25【入寮】



◇入寮◇


 着いた。【ステラダ】だ。

 まさか本当に一日も掛からないとは、自分で整備しておいておどろいた。

 馬車から降り代金を払うと、クラウ姉さんが直ぐに。


「――さ、ミオ。荷物を持って。寄宿舎きしゅくしゃまでは歩きよ」


「あ。うん!」


 馬車から荷物を降ろし、目的地は冒険者学校の寄宿舎きしゅくしゃだ。

 そこまで乗せろよなんて、無粋ぶすいな事は言わないさ。

 歩いて回るのも、いいもんだからな。


「私のも持って」


「嫌だよ」


 「ちっ」って言った……舌打ちすんなよクラウ姉さん。


 さあ、行こうか。

 寄宿舎きしゅくしゃに入ったら、いろいろと準備がある。

 四月の入学式まで、時間は無いぞ。




 【ステラダ】の北西部、冒険者がメインに集まる区画。

 そこに寄宿舎きしゅくしゃはあった


「――デ、デカいわね」


「だねぇ」


 二人で見上げる、冒険者学校寄宿舎きしゅくしゃ【ロンド】を。

 ミーティアの家よりデカいな、この寄宿舎きしゅくしゃ


 でもそりゃそうか、老若男女ろうにゃくなんにょが集まる冒険者育成学校なんだもんな。しかも、諸外国しょがいこくからも生徒が来ているらしいし、学校の生徒はその八割が寄宿舎きしゅくしゃ生活だと言う。


 ここに、俺とクラウ姉さんも……三年間住むんだな。


「……どれどれ」


 俺は、貼られている案内板を見る。


「……東棟が男性、西棟が女性だね。あっちだ」


 今いるのは、学校の正面だ。

 その東に男性寮、西に女性寮があった。


「バラバラなの?」


「――当たり前でしょ」


 なに?この人まさか同室のつもりだったのか?


「それじゃあ、俺はこっちだから……」


「うん。仕方ないわね」


 ルールには従順じゅうじゅんなんだよなこの人。

 流石さすがに前世が日本人だわ。


「それじゃ」


「うん。また」


 俺はそこでクラウ姉さんと別れ、男性寮へ向かうのであった。





 豪華なロビーには、絵画や骨董こっとうが飾られていて、魔法の道具による電気さえも設置されていた。

 ひかえめに言っても、場違い感が凄い。


「ひ、広いなマジで……迷いそうなんだが」


 エントランスには、警備の人がいたよ。

 やっぱり都会だな……俺が入学するむねつたえると、魔法の道具で俺を調べ始めて……数秒で、証明写真付きの通行許可証が渡された。


「すご……」


 あ。警備の人に笑われた。

 な、なるほどな……ここではこれが普通なのか。

 魔法の道具も、きっと標準なんだろうな。


 その許可証には部屋番号も記入されていて、既に俺のが記載きさいされていた。

 もう決まったのかよ……早いな。

 でもって俺の部屋は二階の角だった、ラッキー。


 二階に上がって行き、部屋の前へ。

 念のために許可証を確認しながら。


「ここ、だよな……」


 夜には入寮生徒の紹介があるらしいからな、それまでに準備を終わらせないとな。


「……げっ……二人部屋かよ」


 仕方がないとはいえ、共同生活か……不安だ。

 部屋に入ると、すでに先約がいた。


「――あ」


「おっ!もしかして、同室の?」


 その人物は、まるで待ち構えていたかのように部屋の入り口にいた。

 入り口開けてすぐいたから、ちょっとビビったじゃん。


「ああ、君は……えっと」


 俺は確認しようしたが、当然知る訳はない。

 すると、その男は。


「――僕はトレイダ。トレイダ・スタイニーだよ」


 手を差し出すその少年……なんだろう、この違和感。

 俺は握手あくしゅで返す。


「俺はミオ・スクルーズです……よろしく、トレイダ」


 背の低い、幼い顔の少年だ。

 髪は深い緑色……目は赤色で、中世的な感じだな。


 だけど、う~ん……なんだこの、既視感きしかん

 しかし……いや、そうだよなぁ……知らない人、だよな??


「うん!よろしくミオくん……僕は十八だよ、君は?」


 十八!?


「――え。と、年上!?すいませんっ!生意気で……俺、六月で十五なんですっ」


「ええー!と、年下だったのかっ!す、すごい大きいね……」


 お互いにおどろいて、なんだか居たたまれないぞ。

 でも……なんだか棒読み感が凄いなこの人。

 年上にも見えんし……いや、だけどとにかくよかったよ、ルームメイトが人のよさそうな人でさ。

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