4-27【新入生歓迎会2】



◇新入生歓迎会2◇


 クラウ姉さんは、ぐだって椅子の背凭せもたれに身体を預けたまま、俺に肩を揉まれている。

 もう何分やってんだろ……疲れましたけど。


「あん……気持ちいいぃぃぃぃ」


「変な声出さないでくれよ……皆見てるよ?」


 新入生全員いるんだぞ?多分だけど。

 首席であるクラウ姉さんは、良くも悪くも注目の的だ。

 そりゃ見られるさ。


 更には、この歓迎会を仕切っている二年生が十数名。

 中には三年生も数名、視察のような感じで来ているらしいし。

 具体的な事はしないが、試験官だって大勢いるんだ。

 中には姉さんがのした人もいんだよ?


「だって……気持ちいい~。あんっ」


 絶対にワザとだ、この人。

 普段から、そんなセンシティブな声出さねぇだろ。

 あ~もう視線が痛いよ……マジでやめてくれ。


「――はい!おしまいっ」


「え~」


 まったく。


 家族から離れたからなのか……クラウ姉さんは甘える頻度ひんどが増えた。

 もしかして、ずっと我慢してたのかな?

 そうだとしたら少し意外かもな。


 アイシアやミーティア……俺が二人と向き合い始めてから、クラウ姉さんからのスキンシップはかなり減っていたもんな。

 それはレイン姉さんやコハクもそうだけど、気を遣ってくれてたんだろうな。


「……視線が痛い」


 凄く見られている。

 なんだか、俺ってクラウ姉さんのパシリだと思われてないか?

 男性からはクスクス笑われてるし、女性からは……なんだろう、熱視線?的なものを感じる。なんだ?


 もうそろそろ、歓迎会も終わりだな。

 今……最後の挨拶あいさつがされている。


 しゃべっているのは、二年生の首席……オズマ・シスデセアさん。

 今年で二十歳の大男だ。濃い目の金髪をオールバックにし、ガタイの良い筋骨隆々きんこつりゅうりゅうだな。

 そして隣にいるのは、メガネの美人さん……レスティ・シュバークさん。

 十九歳だ。緑色の髪は太腿ふとももまである。

 イメージは知的なお姉さんだな。この人は、次席なんだとさ。


 この学校の特徴は、やはり年齢に縛られない事だろう。

 このオズマさんもレスティさんも、二年生だが年齢は違う。

 俺たち一年生もバラバラだからな。


「ふぁぁぁぁ~」


「――クラウ姉さん」


 俺はひじで小突く。

 欠伸あくびしてんじゃないよ……いい加減バレるぞ?


「だってさ、長い……先生の話って、聞く人いないでしょ?」


 あの人たちは先輩だっての。

 もう分かってないじゃん。


 とか言っても、先輩の挨拶あいさつすら誰も聞いてない感あるけどな。

 それだけ、適当な会だって事でもある。


 そろそろ終わりだという雰囲気ふんいきも出て来た中、不意に……扉が開かれる。それはもう思いっきり。


 バーーーン――!!っと、いきおい良く開かれた。


「――さーせん!!遅れましたーーー!!」


(なんだ?)


 俺たち新入生も、壇上だんじょうにいる二年生の二人も、どこかにいる数人の三年生も。この学校の教官たちも皆一斉に、開かれた扉……そちらを向いた。


「……黒髪・・?」


「……」


 クラウ姉さんの言葉に、俺も反応しそうになってしまった。


 そう。みずから遅れたと、遅刻宣言した少年は……黒髪だったのだ。

 真っ黒な髪……日本人のような――黒髪の少年だ。

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