4-15【クロスヴァーデン商会1】



◇クロスヴァーデン商会1◇


 三ヶ月ぶりに、ミーティアの姿を見た。

 これはまた綺麗になったんじゃないか?


「ミーティアっ!――久しぶりだっ」


「ええ、本当に来てくれたのね……ジルリーネの言った通りだったわっ」


 俺の所まで駆けてきた青髪の令嬢れいじょうは、うっすらと化粧をしていた。

 ナチュラルメイクと言う奴かな?

 詳しくは知らないけど、ケバくない感じで好感が持てるな。

 服装も、凄くお洒落しゃれだ……どうしても、初対面の時のあの薄着の奴隷どれい姿が脳裏をよぎってしまうが、あれはあれで……いやなんでもない。


「あ~、うん。ジルさんねぇ……」


 俺が微妙な感じなのは言うまでもない。

 魔法って……便利だね。

 俺もまともな魔法を覚えようかな。


 今のように、ミーティアが俺が来ることを知っていたのは、アイズが魔法で知らせてくれたんだよ。ジルさんにさ。

 今頃、村で自分の将来を心配しているであろう汚部屋の女神様がさ。


「私ね、ジルリーネに聞いてからずっっっとソワソワで!」


 「ずっっっと」を、目をぎゅぅっと閉じて溜めて言うミーティア。

 可愛いかよ。


 でも、そうか……そんなにソワソワになるまで、待っててくれたんだな。


「あはは、俺もだよ!」


「うんっ!!」


 テンション高いなぁ、俺もだけどさ。

 まあこれは比較的マジで、俺も久々にミーティアに会えて嬉しいよ。


 それと――


「――ジェイルもなっ!」


 ミーティアの護衛だったのだろう。

 壁に寄りかかり、疲れた目でミーティアと俺を見る褐色かっしょく肌のイケメンダークエルフ。


「ああ……久しぶりだな……ミオ」


 なんだそれ!めっちゃ疲れてるじゃん!

 目元凄いぞ、クマが!


「だ、大丈夫か?」


「ふっ……仕事が立て込んでいてな。実は騎士団長の頃よりも忙しい。七日寝ていない……商人と言うのは、なんともたくましい職だと知ったぞ」


「そ、そっか……大変だな」


 二人は正反対なリアクションで迎えてくれる。

 ミーティアのハイテンションは勿論もちろん、ジェイルのローテンションでも、心配はあるがやはり嬉しいよ。


「それでミーティア、準備は大丈夫なのかい?」


 歓迎は嬉しいが、俺の目的は別に二人に会いに来たことが本題じゃない。

 俺はミーティアに問う。

 彼女が、俺の願いを通してくれている筈だからな。


「ええ、お父様には言ってあるわ。それじゃあ早速、行きましょう……ジェイル」


「……はい。お嬢様」


 悪いなジェイル、馬車の運転までしてくれんのか。

 でも、居眠り事故は止めてくれよ?お前、それでなくても運転荒いんだから。





 俺はミーティアと共に、ジェイルが御車をする馬車に乗り、目的地へと向かう。

 場所は【クロスヴァーデン商会】の会長……ダンドルフさんがいる場所だ。

 つまり、ミーティアの家だ。


「ごめん。せっかくの休みを……」


「ううん、お父様もミオに会いたいって言ってくれたし……大丈夫よ」


 アイズがジルさんと連絡を取っていた事を村で知った俺は、それをつたえて貰っていた。それが今から四日前。

 街道整備をしながら、残りの20キロまで来たところで、【ステラダ】に向かったんだよ。

 丁度、ダンドルフさんが休日だという事で、アポイントを取って貰ったんだ。


「そっか、それならいいけどさ」


「うんっ」


 いい笑顔だ。


 貴重な休みを奪って申し訳ないとは思っているよ。

 だけど、税金なんてえんのない村に、簡単にそれを実行させるのは無理だ。

 だから、協力者が欲しい。

 極力頼らないと決めてはいたが、適材適所と言うものがあるだろ?


 別に、村民や通行人から金を集めるのが目的じゃない。

 金額も、極最小でいいんだ。

 ただ、そういう事があるんだという事を、知ってもらいたいだけなんだよ。

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