4-8【これは俺が決めた事1】



◇これは俺が決めた事1◇


 家に入ると直ぐ、三人の姉妹が俺を迎えてくれた。

 マジであったけぇな……

 雪を被っていた俺の頭をポンポンとはらいながら、レイン姉さんは言う。


「ミオ、さっきは……何も言ってあげられなくて、ごめんね」


 なんでレイン姉さんが謝るんだよ。

 さっき怒鳴どなったのは俺じゃないか、謝るのは……俺の方だよ。


「いや、俺が悪いから。レイン姉さん……さっきはごめん。当たってしまって、悪気はなかったけど……大きな声を出しちゃって――ごめんなさい」


 俺はレイン姉さんに頭を下げる。

 姉さんは「ううん、いいのよ」と言いながら、俺の肩をポンポン――と、優しく叩いてくれた。


 続いて、俺は顔を上げて。


「クラウ姉さんもコハクも、きっと知らなかったんだよね。俺と同じくさ」


 二人はうなずく。

 だけど、クラウ姉さんは少し……感じ方が違うように俺には見えた。


「……父さんと話すよ。俺」


「……そう」


「大丈夫なの?ミオ兄ちゃん」


 クラウ姉さんは短く、コハクは心配そうに。

 だから俺は、コハクの頭をでて言う。


「平気だよ。安心して、喧嘩けんかなんかしないさ」


 この子は村に残るんだ……父さんがどう考えていたって、コハクが父さんを嫌いになるのは違う。

 兄として、それだけはしては駄目だめだよな。


「……うん」


 小さく返事をし、コハクは俺に抱きついてギュッ――としてくれる。

 ポンポンと頭を軽く叩いて、俺は言う。


「父さんと母さんは、部屋かな?」


「ええ。部屋にいるわよ……行くのね?」


「うん。俺から言わないと、このままじゃ父さんがかわいそうだ」


 笑いながら、レイン姉さんに言葉を返す。

 姉さんは少しおどろきながらも、笑みを浮かべ安心したように。


「分かった。雪でれているから、着替えてから来なさい……お父さんには、お姉ちゃんが言っておくから……ね?」


「うん。ありがとう」


 俺は部屋に戻って、雪でれていた服を脱ぐ。

 そう言えば、俺はコートも着ずに家を飛び出してたんだな。通りで寒い訳だよ。





 着替え、温かいスープを飲んでから、俺は父さんの部屋に来た。

 レイン姉さんがつたえてくれているとは思うけど、父さんはしっかりと聞いてくれるだろうか。

 俺の考えを……子供の決意をさ。


「――入るよ。父さん、母さん」


 「開いてるわよ」と、母さんの声。

 俺はゆっくりと扉を開けて入室する。

 椅子に座る父さんは、背を向けていた。


「……しっかりね、ミオ」


「うん。ありがとう」


 入れ違うように、レイン姉さんが部屋を出ていく。

 優しい言葉と視線で、俺に勇気をくれたんだ……いいお姉ちゃんだよ、まったく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る