4-2【キレちまったよ】



◇キレちまったよ◇


 「村を出ろ」……そう言ったのか、このオッサン。

 俺がこの半年、なんのために奮闘ふんとうしてきたと思ってんだよ!


 村の為だろ!?家族の為だろ!!俺は……あんたの為にっ!!

 我慢、出来なかった。

 感情が決壊した……キレたんだよ。


「――なんだよっ……それっ!」


 裏切られた気分だった。

 俺は頑張ったよ……半年間、必死になって村に尽力した。

 大した事件も起きず、野菜を育てて、村の設備を整えて、魔法の道具を使って水道も整えたし、電気に近い事だってもう直ぐ出来そうだったんだ!


 でも、楽しかった……充実していたんだ。

 今の俺にとって、その言葉は一番行って欲しくない言葉だったんだ。


「――出て行けって……事か」


 きっとそうだ……「村を出ろ」って事は、ここにいるなって事だ。

 クラウ姉さんは、冒険者になるって言う夢を叶えるために、この数年必死に修行をしてきたんだ。


 でも――俺は違う!


「……端的たんてきに言えば、そうだ」


 端的たんてきになんて言うなよ……せめてキチンと説明してくれ。

 もう心が追い付かないんだよ!


 この最悪な空気の中、レイン姉さんが席から立ち上がり、父さんに。


「お、お父さん。もっと、しっかりさ……ミオに説明してあげよ?」


 レイン姉さん……然程さほどおどろいてないよな。

 もしかして、知ってたのか?母さんも、何も言ってくれない。

 二人は知ってたって事なのか?


 俺は家族を見渡す。

 唯一、クラウ姉さんとコハクだけが、俺と同じようにおどろいていたように見えたけど。


「……そんなものは必要ない。レインは黙っていなさい」


 なんでだよっ!くれよ説明!!

 言われないと、分かんねぇって。


「あなた……」


 母さんの言葉にも、父さんは背を向けたままだ。

 なんで言ってくれないんだろう。

 この人、こんなに口下手だったか?


「必要はないと言った。クラウと一緒にこの村を出るんだ、いいな?」


「……」


 そう言って、父さんは部屋に行ってしまった。

 一度も俺を見ることなく、行ってしまったんだ。


「……訳が分かんないよ」


 もう、食事なんてどうでもよかった。

 まるでこの村から追放されるような、そんな気分だ。

 いや、実際そうなのかもな。


 お払い箱……か。


「……ミオ」

「ミオ兄ちゃん」


 クラウ姉さんとコハク、多分……二人も知らなかったんだろうな。

 俺と同じ顔をしている、ショックを受けてくれている。

 でも母さんとレイン姉さんは、なんで何も言わないんだよ。


「ミオ……お父さんの気持ちも、少しは」


 そんなの分かる訳ないだろ。

 いきなり言われたんだ、知ってた二人とは違うっ!


「――知ってたんなら、言ってくれればいいじゃないかっ!!」


 バンッ――!!


 テーブルを叩いて、怒鳴どなってしまった……レイン姉さんに。

 父さんに言えないからって、物静かで優しい姉さんにキレちまった。


 最低だな、俺。


「――ご、ごめんね……」


 ――!!……くっ!


 ガタンッ――!!


「――あ……ミオっ!」


 逃げた――逃げたんだ。

 レイン姉さんに馬鹿みたいに当たって、悲しそうな顔をさせて。

 耐えられなくて……逃げた――ごめん、レイン姉さん。

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