3-80【安堵の乙女たち】



安堵あんどの乙女たち◇


 か……帰って来た、村に。全員無事に、一緒にさ。

 すっげぇ疲れた……でも、本当に無事でよかったよ。


 俺もクラウ姉さんも、ジルさんもジェイルもアイズも、大きな怪我も無く全員無事だ。

 しかし村に戻ってから、アイズは真っ先に結界の様子を見に行った。

 やっぱ、村の事は心配なんだな……その結界がどこにあるかは教えてくれなかったけど。

 でもそうだな……なんともなけりゃいいけど。


 ジルさんは、村の入口でジェイルを待つそうだ。

 あの魔物を追っていったジェイルが、何らかしら情報を得らてくるかもしれないからな。

 頼りっぱなしで申し訳ない気持ちはあるが、今は先行投資だと思って頼らせてもらおう。


 そして俺は、クラウ姉さんをおぶって……家に帰宅だ。


「……た、ただいま」


「――ミオ!クラウ!!」

「ミオ兄ちゃん!クー姉ちゃん!」


 真っ先に、レイン姉さんとコハクに抱きつかれた。

 俺とクラウ姉さん、両者をがっしりと引き寄せて、痛いくらいに抱きしめてくれた。

 あったけぇなぁ……家族って。


「もうっ!」

「ばがぁぁぁぁぁ!」


「……ごめん、レイン姉さん、コハク」

「――ごめん、お姉ちゃん。ごめんね、コハク」


 俺とクラウ姉さんは、同時にレイン姉さんとコハクに謝った。

 父さんと母さんにも、心配をかけたな……リビングには……いないな。


 多分、父さんと母さんは部屋にいるんだろう。

 そして……両親の代わりに出迎えてくれたレイン姉さんの肩越しに、俺のひとみうつったのは……ミーティアとアイシア。

 二人の少女だった。


「――よかった。ミオ……ジルリーネとジェイルは?」


 まず言葉をはっしたのはミーティアだった。

 俺の心配、そしてジルさんとジェイルの事も、当然案じてくれていた。


「ああ、村の西口にいるよ。色々と調べてくれてるみたいだ……俺とクラウ姉さんは、情けないけど、先に戻らせてもらったんだ」


「ううん、そんな事ないわ。でも、そっか……それならよかった、本当に……」


 俺が自虐気味じぎゃくぎみに言った言葉を否定し、それでも戻って来た事を喜んでくれる。

 それだけで、心の奥があったかい感じで満たされる。


「ミーティア、村の皆につたえてくれてありがとう。本当に助かった」


 ミーティアには、心配だけをかけたと思ってる。

 俺とクラウ姉さんが魔物と戦うことになると、分かってて村に帰したんだからな……心配は一入ひとしおだっただろう。


 そしてアイシアも、きっとそれを聞きつけて……こうして家まで来ていてくれたんだな。

 俺はアイシアに向いて言う。


「――アイシアも、ごめんな、心配かけて。でも、村も俺も……大丈夫だからさ」


「う、うん……無事でよかったよ。本当に」


 アイシアも、なんだか少しぎこちないか?

 心配をかけすぎたかな。


 二人には本当に助けられたな。

 ミーティアには物理的に助けられて、アイシアには精神的に助けられた。

 もし、あのまま心を迷わせていたら……俺は戦えていただろうか。


「ほら、クラウ姉さん……降りて。父さんのとこに報告に行くよ?」


「……あ。うん……」


 クラウ姉さん、マジで疲れ果ててるな。

 いつもの元気は無いよ、完全に借りてきた猫だ。


 仕方が無いな。ここは……まだ動ける俺が。

 クラウ姉さんを椅子に座らせて、優しく語りかけるように言う。


「……クラウ姉さんは休んでていいからね、後で……話があるんだろ?」


「……うん。ありがと、ミオ」


 疲れた顔で、笑顔を見せるクラウ姉さん。

 マジでダウンだ……思えば、昨日からぶっ倒れてんだもんな。


「いいって」


 でも……もうさ。

 俺、なんとなく分かってるんだよ、クラウ姉さんの夢は。

 だから、俺はクラウ姉さんを応援する。

 どんな結果になろうとも、さ。


「よし……じゃ、報告に行ってくるよ」


 ミーティア、アイシア、クラウ姉さん、レイン姉さんにコハク。

 皆に笑顔を見せて。そして俺は、村長の部屋に向かう……父さんと母さんに、今日の事を報告に行かないとな。

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