3-77【一緒に落ちよう】



◇一緒に落ちよう◇


 地上の戦いが終わっても、空中はまだ戦闘の最中だった。

 だから俺も、クラウ姉さんを手伝う為に空を走る。


「――うりゃっ!!」


 俺は脚にまとった【極光きょっこう】で空中を駆けて、【カラドボルグ】で一つ目の魔物【アーリマン】?を斬り伏せ、辺りを見渡す。


「……はぁ……はぁ」


 クラウ姉さんが肩で息をしている。

 そうだよな、俺が来るまで……一人で戦ってたんだから。


「クラウ姉さん、平気?」


「――平気じゃない。なぐさめて」


 おわっ――空中でひっつかんでくれ!

 バランスが難しいんだよ!


 でも、クラウ姉さんがそうやってふざけるという事は。

 終わったんだな。戦いが。


「ミオ。頑張ったね、見てたわよ」


 なでなでしてくれるクラウ姉さん。

 く、くすぐったいなぁ。

 でも、もうそんな年じゃねぇよ。


「ま、まぁね……俺だってやる時はやるし」


 どうしても照れが出ちまう。

 姉とは言え、嬉しいようで恥ずかしいような、そんな感覚だ。

 前世では一度も得た事のない感情だよ、まったく。


「ク、クラウ姉さんそろそろ離れて、魔力がキツイ……落ちそう」


 そうなのだ。照れでもなんでもなく、マジでもう限界が近い。

 しかし、クラウ姉さんは。


奇遇きぐうね。私も」


「――え」


 俺にしがみ付いて来たクラウ姉さんの背には、すでに翼が無かった。

 その通りだ。俺にしがみ付いたのは、単に落ちそうだったからだよ、畜生ちくしょう


「――ちょっ!!」


「落ちようミオ。二人でなら怖くない」


「こっ」


 怖えよぉぉぉぉぉぉぉぉぉお――あっ!!


「わっ!?」

「……きゃ」


 スン――と、【極光きょっこう】が消えて。

 俺とクラウ姉さんは、落下を始めたのだった。


「おわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「……落ちるっ!!」





 ガサガサガサガサガサガサガサガサ!!――ドスンッ!!


「――痛っでっ!!……ぐふぅっ!!」


 森の木々がクッションになってくれて、落下死はまぬがれた。

 しかし、俺の腹にはクラウ姉さんが突撃。

 体重が軽くとも、重力は重い。


「――いたた……木の枝で切っちゃった」


 俺はそれ以上にダメージ受けてるんですけどね。

 だけど、まぁいいか。無事だし。


「……お疲れさまだ。二人共、立てるか?」


 手を差し伸べてくれるジルさんも、所々り傷などがある。

 きっとジェイルもだろう。


 俺とクラウ姉さんが思い切って戦えるように、影ながら援護をしてくれていたようだしな。

 それでも、出しゃばらないで見守ってくれたのは、自分たちが客人であると自覚をしていて、更に俺の言葉……頼らないで進む……をんでくれたんだ。

 でも、ほとんどの魔物は二人が倒した気がするけど。


 マジでいい人だ、ジルさん。

 ジェイルも、やっぱり強いな……よく勝てたよ、二年前の俺。

 更に、この戦いで一番頑張ったのはこの二人と、アイズだろうな。

 俺とクラウ姉さんは、魔物相手に暴れていただけだ。

 端的たんてきに言ってしまうとな?


「すいません、助かります……ん?」


 起き上がる俺に、視線?


「――魔物?まだ残って……――あっ!」


 居やがった……獣型の、動きの速そうな奴だ。


「お?」


 に、逃げたっ!?俺と目を合わせてから?

 怪しさ満点じゃないか!!


 ジルさんも気付いている。どうする、追うか?

 だが、流石さすがに魔力も体力も……キツイ。


 そんな中、ジェイルが。


「俺が行こう……俺はまだ余力がある。それに、あの魔物はだろうからな」


「ああ、そのようだ。やはり、魔物使いがいたか……この量で統制とうせいが取れていたし……しかし魔物の動きが妙ににぶかったのは……術者が未熟だったからだろうな」


 ジルさんも、戦っている間に色々と考察してくれていたようだ。


「ああ、だから捕まえるさ。まだ近くにいるだろうしな。お前たちは村に戻っていろ」


 そう言って、ジェイルは影に沈んでいった。

 まだ動けるんだな、流石さすがだよ。

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