3-76【煉華2】



煉華れんげ2◇


 ボトボトと、クラウ姉さんが倒し、上から降ってくる魔物の残骸ざんがい

 それがこのバトルフィールドの様々な箇所で魔石になって、不思議ふしぎと周りが綺麗に光っている……まるで決戦のようだな。

 【カラドボルグ】と【煉華れんげ】……二つ同時は少し魔力がキツイけど、これで最後だと思えば気合も入る。

 なにせ他の魔物は、ジルさんとジェイルに任せちまったからな。


「行くぞワイバーン……っ!」


 俺は走りだす。巨体を持つ【グレートワイバーン】の死角を探し、動き回るんだ。

 翼を片方もがれて動きのにぶいこいつには、さぞかし鬱陶うっとうしかっただろうな。


「よしっ」


 見つけた!図体ずうたいがデカいと、こう言う動きはウゼェよな!!

 そう心で言いながら、俺は右手をワイバーンの身体に向ける。

 見えてねぇだろ?下だよっ!


「――おらぁ!!」


 ドンッッ――!!

 炎をまとったパンチだ。

 ふっふっふ、【炎の一撃ファイアアタック】と名付けよう。


 ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁんっっ!?


「――おわぁぁぁぁっ!!汚ねぇっ!」


 きやがった。炎が混じった胃酸いさん……か?

 下にいた俺はそれをける。

 ついでに、けざまに【カラドボルグ】を振るった。

 相変わらず手応えはないが、ワイバーンの足がかれていた。


 ぎゃあああああ!!


 ズッスーーーーーン!と、崩れる【グレートワイバーン】。


「……なんだろうな、これ」


 手応えがないんだよ……剣の事じゃない――魔物の強さだ。

 百体もの魔物がいて、こんなに簡単でいいのか?


 俺は、すきを見つけてアイズを見る。

 そのアイズも、ジェイルの隣で不審ふしんそうに魔物どもを見ていた。

 なるほど、アイズにも分からない……と。


「なら、速い所ケリをつけて――この不自然過ぎる魔物がどうしてここに来たのか……探さないとなっ!」


 【カラドボルグ】を両手で構え、右手からは【煉華れんげ】の炎を渦巻かせる。

 炎の魔剣……カッコイイ!!


「――【無限むげん】っ!!」


 倒れるワイバーンの足元をもろくする。

 たったそれだけで、ワイバーンは動けない。

 せいぜい、暴れて炎をくくらいだ。


 だがしかし。


「――効かねぇ!」


 炎をまとった【カラドボルグ】でぎ払う。

 俺の【煉華れんげ】の方が、炎の威力が上のようだな。


 ぐぎゃるる!?


 お前もこれが最後だって分かってんだろ?

 だから、そんなに必死に炎をき散らしてんだよな!?


 でも……それは俺も同じさ、魔力が心許こころもとない。

 だから終わらせるっ!この炎の魔剣で……全部!斬ってやる!!


「――ぅおおおおおっっ!!」


 俺は跳ねた。

 【無限むげん】を使って操作した、バネのように跳ねる様に設定した地面のブロックを蹴り上げて、俺は大ジャンプをする。


 目標は……ワイバーンの頭だ。

 唐竹割からたけわりってやつだよ!!


 ワイバーンは、最後に盛大に息を吸いこみ、跳ねた俺に向かってブレスを吐き出した。

 距離的にも体勢的にも、もう避けることは出来ない。

 だから……もう知らん!このまま行ったれぇぇぇぇぇぇ!!


 火炎が身体に当たる……熱い。でも、痛くはない。

 能力――【煉華れんげ】のおかげで炎の耐性が上昇しているんだ。


「――うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」


 火炎を抜けた俺と、【グレートワイバーン】の目が合った。

 あっけない決着だよな、グレートだかなんだか知らんが。

 クラウ姉さんに落とされて、俺に殴られて斬られて……さ。


 ――ザンッッ!!


 斬撃の手応えがないまま、俺は着地する。

 【グレートワイバーン】の足元に……しかし、ワイバーンは反撃すらせず。


 俺は見上げ、戦った相手の最期を見届ける。

 【カラドボルグ】の赤い軌跡きせきは、ワイバーンの頭から下半身まで、一本の筋となって残った。

 炎揺らめくその軌跡きせきは、俺の一閃によるものだ。


 ぐらりと、ワイバーンのは左右に倒れていく。

 真っ二つにけて、崩れ去っていったのだ。


「――しゃあっ!!」


 勝利を確信し、剣をかかげる。

 格好良く終わりたかったんだよ――しかし。


「――あ。おわぁぁっ!!ちょっ……クラウ姉さん!!」


 目の前に魔物の残骸ざんがいが降って来るんだもん。

 格好つけさせてくれよ、たまにはさ……

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