3-74【天空のクラウ2】



◇天空のクラウ2◇


 光につらぬかれて、蝙蝠こうもり型の魔物は次々と落下していく。

 その際には魔物特有の魔石へと代わり、地上にぽとぽとと落ちた。

 後で回収するらしいわよ。ジルが言っていたから。


「ふぅ……次っ!」


 魔力はまだまだ大丈夫ね。

 今の攻撃でどれくらい倒した?

 少なくとも、十体はれたと思うけれど。


 私は【クラウソラス・クリスタル】を構え、白い翼を広げて進む。

 まだ飛行には慣れないけれど、魔物の動きが鈍間のろまなせいで多少楽だわ。

 この翼も、筋肉を動かす感じと同じで……私の身体の一部のように動いてくれるし。


「はぁっ!……ふっ!!」


 【結晶剣クリスタル】の切れ味は抜群。まるでなます切りのようだ。

 蝙蝠こうもりの他には、一本足の鳥や、目玉に羽の生えた気持ちの悪い魔物がいた。

 でも、脅威きょういではない。

 一番厄介やっかいそうなのは、あの大きな魔物。

 確か……【グレートワイバーン】だったはず。


 他の魔物に遅れて、図々しい態度(私にはそう見えた)でやって来る。

 翼が小さいのに、空に浮かんでいるのが……説明されてもやっぱり不思議ふしぎだ。

 でも、さっき魔力だと言われているし納得できる。


「……斬るっ!」


 構えて飛び出す。

 瞬間的なスピードなら絶対に負ける事はないわ、自信がある。

 私の突撃をさえぎるように、他の魔物が【グレートワイバーン】を守るように取り囲んでいく。


「――【貫線光レイ】っ!」


 私の対角線上にいる二体の魔物を、光線がつらぬく。

 一瞬で魔石となって、落ちていく同胞の断末魔だんまつまを聞きながら、【グレートワイバーン】は私を見ていた。


「……直ぐに地上に戻してあげるわよ、蜥蜴とかげっ!」


 私には、翼竜がどうとか言われても分からない。

 せいぜい、羽の生えた蜥蜴とかげだ。


「行くわよっ……【クラウソラス・クリスタル】!!」





 くっ、流石さすがに数が多いわね。

 【グレートワイバーン】を守る魔物も数が減って来て、動きも楽になって来たけど。

 私は滞空しながら、魔物どもが密集するかたまりを見る。

 そのかたまりは、動くことなくこちらをにらむばかりだ。

 どうして【グレートワイバーン】は動かないのかしら。

 アイズが張った結界があるから?

 それにしても、北に向かおうとする素振りもない……不自然過ぎない?


 そんな考えを、一瞬しただけ……しかし。


「わっ――っと……あぶ」


 たったそれだけの隙を、魔物は見逃さなかった。

 【グレートワイバーン】が、口から炎を出して攻撃をしてきたのよ。


「つ、翼が……げたじゃないっ!」


 魔力で出来ているから、痛みはないけれど。

 でも、腹が立つことに変わりはない。


「……【クラウソラス】っ!!」


 更に追加で魔力を剣に注ぎ、光をまとって突撃する。

 風が巻き起こり、私は弾丸のように【グレートワイバーン】に迫る。

 しかし、残っていた魔物も親玉を守ろうと盾になって行く。


 だけど、魔物どもの防御力よりも断然、私の突撃の方が威力が上だ。

 粉々になりたいのね。


 パンッ――パンッ――


 まるで風船がはじけたような音だった。

 そして、私の突撃は魔物の壁を抜けて、【グレートワイバーン】に……当たった。


 いや……かすった。


 ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!


 耳をつんざく悲鳴は、ドンドン地上に向かっていく。

 ああ……あの小さな羽に当たったんだ……それで、落ちて。


「――あ」


 【グレートワイバーン】が落ちていく真下に、ミオがいた。

 やっば……だ、大丈夫……よね??

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