3-73【天空のクラウ1】



◇天空のクラウ1◇


 戦いが始まったわ。

 私の役目は、空の敵の殲滅せんめつ


「――来たっ!」


 遠くからでも大きく見えたあの空飛ぶ蜥蜴とかげ

 ワイバーン?だっけ……私はくわしくないから、ただの空飛ぶ爬虫類はちゅうるいにしか見えない。

 でも敵は敵だ、絶対に村には行かせないから。


 アイズレーンに強引に聞いた、【クラウソラス】の派生能力――【天使の翼エンジェルウイング】。

 魔力を翼に変え、飛行を可能にする技……らしい。


「五十体か。アイズが結界を張るって言ってるし、ジルにも気負わなくていいとは言われたけど……」


 不審ふしんすぎるのよね。

 アイズもだけれど、魔物も……どうして急に?


 色々と考えることが多すぎる、ミオの事も含めて……ね。

 アイズがどうしてミオを気に入った?可愛いから?カッコイイから?

 違う。そんなのじゃない。


「ふぅ……駄目だめね、今は……目の前の敵だけを見ないと」


 アイズが私に対して言ってきた言葉は、おどしにも近いものだった。

 『弟を巻き込みたくないでしょ~?なら、あたしの事はトップシークレット、秘密だかんね?』……そうムカつく笑顔で言って来た。


 だから、その代わりに【天使の翼エンジェルウイング】の使い方を聞き出したんだ。

 一度聞いてしまえば、発動は簡単だった。

 【クラウソラス】を固形化する能力――【結晶剣クリスタル】。

 それと同じ要領ようりょうで、背中に魔力を固めるイメージだ。

 【クラウソラス】は、普段は魔力の状態で私の中に存在するらしく……思いを込める事で具現化する。


 この方法なら、もしかしたら様々な方法で応用が利くかもしれない。

 そんな事を考えながら、私は魔物の大群たいぐんを見る。


「……さぁ、始まるわっ!!冒険者を目指すなら……魔物くらい全て倒してみせるっ!!」





 戦闘が始まって、ミオの魔法が地上で放たれた。

 地面を操る魔法で、魔物の軍の進行をき止める。


 その上での各個撃破が作戦だ。

 下ではジルとジェイルが、私を見守ってくれている。

 ミオの事も援護してくれるらしいし、頼もしくはあるわね。


「――【クラウソラス】っ!!【結晶剣クリスタル】っ!!」


 覚えたばかりの新形態。

 【天使の翼エンジェル・ウイング】と同じ要領ようりょうなら、魔力の燃費も少しは抑えられると分かったから、最初から試して見せる!


 実体剣となった【クラウソラス】を持って、私は飛んでくる魔物をにらむ。


「行くわよっ!!」


 蝙蝠こうもりらしき黒い魔物は、私目掛けて突進してくる。

 だから、すれ違い様に一閃する。


 切りく音など出もしない、静かなる攻撃。

 一刀にして魔物は消滅して……核とみられる石だけを落としていった。


「……いけるっ!」


 確信した。ジルやジェイルと戦うよりも簡単だと。

 このまま一気に数を減らすっ!!


 私は【クラウソラス・クリスタル】を魔物の大群に向けて、叫ぶ。


「――【孔雀貫線光ピーコックレイ】っ!!当たれぇぇぇぇぇぇ!!」


 扇状に、光の粒子がきらめく。

 魔物のどこを狙えばいいかだなんて分からない。

 だから、取りあえず当たればいい。


 質より量で……勝負よっ!!

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