3-65【急転する村2】



◇急転する村◇


 どうする!?この村には戦える戦力はない、ある訳がないんだ。

 せいぜい俺と、警備隊のクラウ姉さんとガルス。

 ジルさんとジェイルがいるが、あんな事を言って、直ぐに手を貸してくれだなんて言えるか?そんな図々しい事、言えるわけがねぇ。


 だから、俺が何とかしないと。

 でも、魔物?二年前にジルさんと一緒に戦った魔物くらいなら、【無限むげん】で何とかなるが。


 この肌を焼くような感覚……絶対に低級魔物じゃない。

 それは、目の前でけわしい顔を見せる女神様を見ても分かる。


「……アイズ、魔物の規模きぼは分かるか?」


「少なくとも、陸五十、空五十……ね」


 合計百か……そんなもん、どうやったって一人じゃ無理だ。

 ましてや、俺は戦えるような能力も魔法も。


 ――違う。

 あるんだ、俺には――ある!


「アイズっ!能力の使い方を教えてくれっ!ヒントだよ、ヒントっ!!」


 そうだ、今までもこの女神が、俺に能力のヒントをくれていた。

 だからそれを実行して、戦うしかない!


「……やるつもりなの?あんたが一人で?」


「一人じゃない、クラウ姉さんもいる。もし、敵が魔物だけじゃない……それこそ、魔族や転生者が相手なら、絶対にクラウ姉さんの力が頼りだ。俺も、全部を隠せるとは思えない……だから素性がバレてでも、戦うしかないんだっ」


「でも、まだ――」


 何かを言いたそうなアイズ。

 だが、時間はないんだ。


「アイズ。あんたが頼りだっ!人間になったって事は、今あんたは戦えないんだろ?だから、俺が代わりにこの村を守るっ……力を貸してくれっ!」


 自分の名がついた村だ、あんただって守りたいんだろ?

 いや、実際に……結界を張ってまで守っててくれたんだもんな。

 結界を破った奴が、魔族なのか転生者なのか、はたまた神なのかは、俺には分からない。


 だが俺にやれることはただ一つ。

 この村を……故郷を守る事だ。


「――分かったわ。目を閉じて……集中するの……胸の奥、灯火ともしびを感じて。あんたには初めからそなわってる……最初から、あんたは持っているのよ!この世界の転生者は千五百人……神界に残っていた能力と武器は五百弱……その全てを、あんたは使えるんだからっ!!」


「……助かる」


 俺は、言われるままに目を閉じる。

 胸の奥……心の奥にともる、かがやきを探して。

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