3-66【急転する村3】



◇急転する村3◇


 静かだ……何も無い空間。

 まるで、前世で死んだときの……あの空間のようだと思った。


 でも分かる。ここは、俺の心の中なんだ。

 アイズのみちびきで辿たどり着いたこの場所で、探さなければ。


 力を、能力を。


 今までだって、数個の能力を自力……では無かったが、見つけてるんだ。

 絶対に出来るはずだ。

 なんたって、始めからあるんだからな……ただそれに気づかなかっただけで、持っているんだ――五百個以上の能力と、武器を。


 あからさまにチートだよな。

 正直、物体の数値を弄繰いじくり回せる【無限むげん】だけでもヤバい能力だってのに、五百?アホちゃう?

 そんなの、神に狙われたっておかしくないわな。


 しかも、残った全能力って言ったよな?それって、新しい転生者が産まれないって事だろ?

 俺のせいで、この世界に産まれるはずの転生者は、増えないって事だ。


『――聞こえる?ミオっ』


 お、おお……アイズか、聞こえるよ。


『よかった。今、魔法であんたに声をかけてるけど、時間は無いわよ……少なくていいから、サッサと戻って来なさいっ』


 それはそのつもりだよ。

 現に、もう見えてるんだ。

 だけど、どれをつかめばいい?


『どれでもいいわっ!全部レベル99だからっ』


 はい?レベル?

 能力にレベルなんてあんのか?初耳なんだが。


『転生する時にあんたが聞かなかったんでしょっ!?直ぐに転生させろって言ったでしょーが!!』


 す、すみません。それは俺が悪いです。

 能力にレベルが存在するなんて思わなくて。

 だが……全てレベル99?って事は……【無限むげん】も?


『そうよっ。全ての転生者は、本来能力がレベル1から始まるの……でも、あんたはあたしのミスで、残った全能力と武器……それをレベル99で贈っちゃったのよっ!』


 そうなのか……って事は俺、話を聞かないくらいに適当だったんだな。

 今思えば、死んで……投げやりになってたんだな。

 十四年前の自分をかわいそうに思いつつ、それでも俺は。

 分かった、急ぐよ。どれも強い能力なのは間違いないんだ。


 でもせめて、戦える能力がいい。

 【豊穣ほうじょう】や【美貌びぼう】、【強奪ごうだつ】に【譲渡じょうと】、【丈夫ますらお】のような、非戦闘能力だったら、意味がないからな。

 せめて、【無限むげん】や【極光きょっこう】のような能力……あるいは武器が欲しい。


『――そこっ!もう見えるでしょ!?それにしときなさいっ!』


 ああ、見えてる。

 熱い……炎のようなかがやきだ。

 そして、全てを砕く……破壊者だ。


 最後は……ああ、お前か。

 そうだよな、そう言えばお前も……最初の選択肢の一つだったんだ。

 悪かったな、十四年も待たせて……行こうぜ――【カラドボルグ】!!

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