3-59【行動に移ろう】



◇行動に移ろう◇


 幼馴染のおかげで冷静になった俺は、一人で家に戻る。

 アイシアは……一旦家に帰ったよ、もともと帰る為に外に出たらしいからな。

 それで泣きそうな俺を見かけたもんだから、声をかけたんだってさ。


 だけど、そのおかげで色々理解した。

 俺は――目標を探すことにしたよ。

 夢って言われてもいい……それでもいい。


 そんな事を考えながら、リビングに行くと。


「……なにそれ?」


 入った早々に、アイズが頭を押さえて涙を浮かべていた。

 でもって、クラウ姉さんが不機嫌そうにテーブルにひじを着いていた。


 これは……殴られたな。でも、どうせお前が悪いんだろ?アイズ。

 斬られなかっただけでもマシだって思っとけ。

 アイズは俺に近付いて、こそっと言う。


「ミオくん。あなたのお姉さんは、少し乱暴ですね……シクシク」


 わざとらしいな。いや、完全にわざとだろう。

 視線はクラウ姉さん……そして父さんだ。

 チクるって言ってんだよな。もう俺にチクってるけどさ。


「それはすみません……でも、行動には気を付けてくださいね?まだお客様なんですから」


「は、はい……すいません」


 誰にも見えない様に、少しアイズをにらんでおいた。

 後から話をややこしくされたら、たまらないからな。


 きっと、クラウ姉さんとアイズ……二人は何かを話したんだろう。

 だがアイズの様子から見ても、心配は要らなさそうだ。

 こいつが口がうまいのは分かったからな。


 クラウ姉さんも、俺に素性をバレたくはないだろうしな。

 こいつとタイマンの時じゃないと、転生者関連の話は出来ない。

 それは俺もクラウ姉さんも同じだ。

 なら、こいつの旅人ロールプレイに合わせる。


「それじゃあアイズさん、父さんに話があるので、一緒にお願いします」


「?……ええ。分かりましたわ」


 そうだ……俺は、自分がしたい事をする。

 リビングにはまだ父さんが残っている。

 母さんやミーティア、ジルさんもジェイルもいる。


「……父さん」


「ん……?どうしたミオ」


 父さん……あんたが村長として頑張るって決めたのなら。

 俺も応援するし、協力もする。

 でも……俺は村長をぐ気はないからな。


「アイズさんの家を建てるよ。でも、資材が足りない……資金を出してくれないかな?」


 俺の提案に、父さんは言う。


「――昨日の材料が残っているだろう?それを分けて貰えないのか?」


 知ってるよ、ミーティアとジルさんの家のな。

 でも、それじゃあ駄目だめだ。


「そんな事はできないよ。悪いしね」


 父さんがそういうって事は、あらかじめミーティアにはもう言ってあって、すでに許可も得てるんだろ?

 でも、それでもそれは駄目だめだ。


「ねぇミオ、私は――」


 ミーティアが何かを言いたそうにしたが、俺は手で制した。


「ミーティアの家の資材と、アイズさんの家は別口として考えるべきだよ。これは村として、個人でやるべきだ……だから、自費で建てるべきなんだよ」


「だがなぁ、ミーティアさんがいいと」


「――それじゃあ駄目だめなんだって。父さん……アイズさんは、この村に住むって言ってくれているんだよ?それを、借りた材料で建てた家にするつもりなの?」


 あくまでも、ミーティアとジルさんは永住じゃない。

 仕事があるから、ここにきょを構えるだけだ。

 分かるだろ?父さん、周りに頼りっきりじゃあ……この村は生き残れないぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る