3-54【旅の果てに辿り着いた(と言う設定)】



◇旅の果てに辿り着いた(と言う設定)◇


 食事を終えて、まるで別人のようなアイズの言葉を全員で聞く。

 俺は笑いを必死にこらえながら。

 クラウ姉さんは疑心の目でアイズを見ていた。


「昨日、逃げる際に魔法を使われ、あんなにもボロボロになったわたくし。ミオくんがいなければ、わたくしはあの男どものなぐさみ者になっていたでしょう……女とは言え一人旅、危険はたくさんありました。ですが……この村に辿り着いたのは、運命だと思っております」


 なぁ女神様、あなた噓はつけないんですよね?

 その話、大噓になりません?

 俺、そこまで大袈裟おおげさにしろなんて言ってねぇぞ。精々、俺の考えた物語を読み聞かせるような、そんな感じでいいと言ったのに。


「それは大変でしたな。しかし、運命……ですかな?」


 そりゃそうだ。

 父さん、この人の名前……アイズレーンって言うんだよ。


「はい。わたくしの名はアイズ。聞けば、この村の名は【豊穣の村アイズレーン】と言うとお聞きしました……これは、運命です」


 お前をもとに名付けられてるらしいからな。

 本人だったら、だけどさ。

 ああ、その通りだよ……俺はまだ信じてない。


「おお、それは確かに。運命的ですなぁ……」


 父さんの言葉に、母さんも「そうね」と。

 レイン姉さんも「凄い偶然ね……」と、コハクは「へぇ……」と。

 クラウ姉さんは……ああ、笑いこらえてるな。


わたくしは遠く遠くの国から旅をしてきました……それはもう遠く、もう何年になる事でしょう」


 神の国からって事か?

 まぁ年齢も不詳だし、旅自体も噓じゃないのか。


「それほどの時間を、一人で?」


 ジルさん……今は黙っていよう頼むから。

 この場でもっとも注意しなければならない人物は、確実にエルフの兄妹だ。

 二百年以上を生きたエルフには、歴史や地理に詳しいはずだからな。

 ボロを出すなよ、アイズ。


「ええ。もう数年になりますね……わたくしの町では、成人の儀があるのです。それが、一人旅でした。エルフのあなたなら、お分かりになるのでは?」


 そうなのか?

 あ。そうか、アイズもこの世界の事には詳しいから……世界のどこかにある風習を語ってるんだな?


「……ふむ……確か東の国に、そう言った風習を持つ町があった筈だ。なぁジェイル」


「――ああ。東国【イングラス共和国】だな。その国の更に東……確か、町の名は――」


 ジェイルが補足しようとした所を、アイズが。


「――【リピラス】ですわ」


 ジェイルとジルさんがうなずく。

 これはナイスだな、アイズ。流石さすがは女神、この世界には詳しいようだ、後で色々話を聞こう。


「その町には古くから、成人をしたら町を出て一人で旅をすると言う風習があります。そして、旅の果てに自分の居場所を探すのですわ。勿論もちろん、疲れて町に帰る者も多くいますが……わたくしは、見つけてしまったのです……この村を」


 と言う設定な。


 だけど、これはあれだな……断りづらいわ。

 他の国の風習を馬鹿にすることも出来ないし、それをないがしろにして追い出すわけにもいかない、しかも相手は村長だ。

 更に、この村は人口が少ない……少しでも欲しいもんな、住民。

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