3-51【皆で朝食を2】



◇皆で朝食を2◇


 そう言えば、ミーティアとアイシアが会うのは久しぶりだったな。

 前に会ったのは、確か数ヶ月も前だったか。


「お久しぶりです、アイシア」


「はい、ミーティア」


 こ、これは……俺、どうしたらいい?

 気まずいとまでは言わないが、なんとも微妙びみょうな感じだ。


「住むんですね、この村に」


「ええ。【ステラダ】から増える従業員の管理が仕事でね。正式にはまだだけど、近いうちに荷物を運ぶわ」


 ミーティアも、自分が仕事で来ている事を自覚しているし、私情をはさまない感じは偉いよな。


「そうなんだ。それじゃあ……お手伝いしますねっ」


「え――本当っ!?わぁ、嬉しいわ、アイシア……!」


 お?なんだかいい感じだな。


 実は、前回はひど殺伐さつばつとしたした雰囲気ふんいきだったんだ。

 俺はそれに耐えられなくて――逃げた。

 分かってるよ、悪かったな……ヘタレで。


 でももしかして、その後何かあったのかな?

 俺が作ったばかりの階段をタタタッ――と降りてきて、ミーティアはアイシアの手をつかんだ。

 農作業の土なんか気にせず、アイシアの両手をがっしりと。


「感謝するわアイシアっ!人手が足りなかったの、本当に嬉しいっ」


「ミ、ミーティア……手が汚れちゃうわ、私、土が付いてて」


 アイシアは手を離そうとしたが、ミーティアはお構いなしだった。

 余程嬉しかったのだろうか。


「えっと、二人は……いつの間に仲良く?」


 別に仲が悪い訳ではなかっただろうが、どちらかと言えばアイシアが敵視していたように思えてたんだけどな、前はさ。

 今は全然そんな事を感じさせないよ、この二人。

 本当に不思議ふしぎでならない。


「別に仲悪くなんて無いよ?ねぇ?」


「ええ、同じ目的を持つライバルではあるけど」


「「ねっ」」


 二人は顔を見合わせて笑い合う。

 本当に仲が良いのか?

 すえぇ、俺の知らない所でも……ドンドン進展するんだな。

 深くは知らないが、仲がいいのはいい事だと思う。


「そ、そっか。それならいいんだけどさ……あはは」


 俺は、変な笑い方しか出来なかったよ。

 だって不穏ふおんじゃないか?仲が悪いと思っていた女の子同士が、突然仲良くなるのって。

 俺の考えがゆがみ過ぎ?そ、そうかなぁ……





 朝の談笑を終えて、アイシアと二人で俺の家に入る。

 ミーティアは一度、ジルさんを起こしに行ったよ。

 あれ、そう言えばジェイルは?父さん母さんに謝罪したんだよな?あの後から見てないけど。


「……おはよう」


「おお、ミオ……アイシアも、おはよう」


 父さんがいたから、挨拶あいさつ

 俺よりも少し遅い起床だな。それでも充分早えけど。

 アイシアは「おはよう、おじさん」と言って台所へ向かう。


 そんなアイシアの後ろ姿を見ながら、父さんが。


「ふぅ、朝から大変だな。お前も」


「――見てたの?」


 趣味悪いぞ、父さん。


「ははは……すまんすまん、外に出て空気を吸おうとしたら……三人が見えてなぁ。出ていくのも悪いだろう?」


 そう言えば、父さんも畑の世話はするんだもんな。


「まぁ、別にいいけどさ……」


 素っ気ない態度で、俺は部屋に戻る。

 あのポンコツもそろそろ準備できてるだろって思ったんだが。


 カチャリ――と自室の扉を開けると。


「……どういう事?」


 部屋には、アイズ以外の来客が居たんだ。

 その結果に、俺はそれしか言えなかった。


「……はぁ?」


 地べたにいつくばるのは、女神。

 そして、その上に堂々と座る……俺の姉――クラウ姉さんが。

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