3-41【まさかのアイツ】



◇まさかのアイツ◇


 ドォォォォォーーーーーーン――!!


 まさしくそんな音だ。

 俺の整えた【無限むげん】でも、衝撃は完全に殺せなかったのか、大きな穴が開いていた。


 ゆ、揺れたなぁ。

 この村で初めて感じたかもな、地面の揺れなんて。

 こりゃ、村ではさわぎになるだろうな。


「な、なんだったんだ?」


 様子を見る様に、俺は周辺の地面を元に戻す。

 そうする事で、さわぎに誰かが駆け付けても大丈夫なようにしたのだ。


 衝撃で舞った土煙つちけむりが晴れていく。

 落ちてきた何かが穿った大穴……俺はそこを見下ろす。

 見事にクレーターのようにへこんだその中心点にあったもの……それは。


「――は!?……し、尻?」


 そう……見事な尻だった。女のな。

 プリンとした桃のような、白桃だった。

 そして、その桃には黒いリボン……ではなく、黒の紐パンが。


「だ、だれ?いや、人なのか!?」


「――む、むごぉぉぉぉぉ!んごぉぉ!むぐぐぐっ!ふぐっ!」


 あ、これヤバいやつだ。


「――ちょ、ちょっと待ってろ!」


 クレーターのようにへこんだ地面、それを俺が柔らかくしたせいで、この桃尻は頭から突き刺さったらしい。

 大変不健全な格好で尻を丸出しにする女を、まぁ助けにゃならんよな?


 それに、危険性は……不思議ふしぎと感じなかったからな。

 穴に下りて行く俺だが、プリプリ藻掻もがく尻に。


「――で、どうすんのコレ」


 あ、あの~、触っていいですかね?

 脚とか尻とか腰とかさ。

 これじゃあ、つかむところないんですけど。


「むぐぅぅぅぅぅ!うっ!!ぐ……。……。……」


 あ。やべぇ、遠慮えんりょしてたら死ぬ!

 後でセクハラとか言うなよ!?


「よっ――ってそうか、【無限むげん】!!」


 無理に力技じゃなくてもよかったんだった。

 もう触っちまったけど。

 【無限むげん】で、この女が埋まっている周囲を柔らかくして。


 ――スッッポーーーーーン!!

 引っこ抜く。いとも簡単に。


「――ぶはぁぁぁぁぁ!し、死ぬっ……死ぬわぁぁぁ!!」


 けつ丸出しで死んでるところ見つけられたら、たたられるだろうな。

 それにしても見事な桃尻でした、まるで人間じゃないようで――ん?


「あ、あれ……?この声」


 聞き覚えがある。

 と言うか、最近も聞いた気がする。

 夢の中で。


「――もおぉぉぉっ!なんであたしがこんな目にぃぃぃ!泥だらけじゃないっ!最悪なんですけどぉ!」


 人を小馬鹿にしたような言い回し。しかし超美声。

 このポンコツを内包したような展開。


 コイツ……まさかっ!


「ねぇ、あんたがあたしを助けたのねっ、最高の仕事よっ!めてあげる。この――ん?」


 一時停止。

 止まったなぁ完全に。


「んんん?」

「――あ?」


 だよなぁ、この泥だらけで顔もよく見えない女。

 この声にこの態度、もう完全にアイツだよ。


「――お前……アイズだろ」


「そ、速攻で見つかったぁぁぁぁぁ!!」


 うるっせぇ!!

 あと何に?俺にか?


流石さっすがあたし!人間になってもこの天運!持ってる神は違うのねっ!!」


 もうやだマジで面倒臭めんどうくさいコイツ。


「ふっふっふっ!探したわよっ人間!」


 いやいや……今、速攻で見つかったっ!て言ったろ。

 探してもいねぇじゃねぇか。

 あと、見つけてあげたのは俺だからな。


「何しに来たんだよ。女神はイエシアスだけで間に合ってるんですけど」


「――は、はぁ!?あたしが人に身をとしてまで来てあげたのに、その言い草ぁ!?」


「人に……?」


 だからか。雰囲気ふんいきはともかく、神々しさを感じなかった。

 いや、別の何かは感じるんだけどな。

 綺麗なとことか、ポンなとことか。


 ともかく、なんだかよく分からないが……俺は【女神アイズレーン】と再会してしまった。

 転生して十四年……俺をこの世界に転生させた張本人の姿を、初めて見たんだ。

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