3-38【流星】



◇流星◇


 お、終わった。

 紆余曲折うよきょくせつって言葉がぴったりなほどの、行ったり来たりを繰り返して数時間。

 俺の家……その隣に、立派な別荘が建った。


 頑張った。頑張れたのも、全部コハクのおかげだな、うんうん。

 俺が作業中、常に「お兄ちゃん♪がんばって♪」と応援してくれててさ、マジでモチベになったんだよ!聞いてくれ、やっぱりうちの妹は天使かも知れん!!


「終わった……コハク、ありが――」


 うん?コハクちゃん?


「あはっ!あはははははは!ほ、ほんと……ミオ、おかしっ」


 あ、あれぇ?腹を抱えて笑ってる妹ちゃんがいるのですが。

 何が起きましたかな?ふむふむ、まったく理解できませんが。


「コ、コハク……?」


 お兄ちゃんは頑張ったぞ?

 めるべきじゃないのか?伸びるぞ?お兄ちゃんは。


「た~んじゅんだね、ミオは!クー姉ちゃんが言った通りだったっ!」


 はい?クラウ姉さん?


 はっ――!ま、まさか……!?

 俺は、かつがれたのか?


「くっ……そ、そんな」


 コハクがそんな事をするなんて。

 クラウ姉さんの入れ知恵かよっ!!チクショー!


 せっかく完成させたミーティアたちの家が、クラウ姉さんの入れ知恵で出来上がっただなんて、悔しいじゃないか。


「コハク……クラウ姉さんの話はあまり聞いちゃいけないよ。あーなっちゃうからね」


 絶対に真似をしてはいけません。

 あれは悪い例だから。


「あははっ。うん、コハクの目標はママだからだいじょーぶだよっ」


 残念だったね、クラウ姉さん。

 妹の目標はお母さんだそうですよ、いい子だね。

 とか言いつつも、髪色とか性格とか……コハクはクラウ姉さんによく似ている。

 思考も多分、極端きょくたんに似ている時がある。


「でもミオってすごいね、その魔法……コハクも使えるようになるかなぁ?」


 好奇心旺盛こうきしんおうせいでいいね。

 でも、魔法はどうだろうか。


 この村では、今のところ俺とクラウ姉さんだけが、“一応使える”という事になっている。

 だって……本当は能力だからな。


「ど、どうかな……頑張れば出来るんじゃない?」


 兄として、無責任な事は言えないが。

 コハクなら、将来出来てもおかしくないだろ?

 なんたって、俺やクラウ姉さんの妹なんだからな。


「えー、ミオ適当じゃん……おっかしー」


 適当は言ってないって、本当に思ってはいるからね。

 だけど、きっとこの村では無理だ……それは確実だと思う。


「ま、頑張ればいいさ……コハクはまだ十歳なんだから、きっと使える様になるよ」


 この子が将来どうなりたいか……それは分かんねぇけど。

 でも、お兄ちゃんは応援するぞ。


 妹の将来を期待(不安)する兄。

 そんな当たり前の光景を破壊するように、それは突然現れる。


 そう、本当に――突然だ。


「――あ!!見てみてミオ!流れ星だー!」


「いやいや、流れ星は一瞬だけで……こんなに長くは……見え、ない――え?」


 それは、どんどん近付いているように見えた。

 この村に近付いている?


「すっごーい!!」


 確かに凄い、けど!!

 落ちる……近いぞ馬鹿野郎!!


 家では謝罪案件中。

 外では流れ星が落下。俺は魔力がカツカツ。

 もうさ、なんつータイミングで降ってくんだぁぁぁぁぁぁぁ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る