3-37【小悪魔妹コハクちゃん】



◇小悪魔妹コハクちゃん◇


 ビ、ビ、ビックリした……マジでビビった。

 心臓バックバクだぞ。

 それに、コハクが隣にいる事、全然気づかなかったんだが。

 どんなステルスですかまったく。


「コハク、ビックリさせないでよ。お兄ちゃん、ビクってなったじゃないか……」


「あ~、なってたぁ」


 ケラケラ笑う妹。


 いや、マジで心からなったよ。

 寝ながら身体がビクン――!ってなるやつ見たいにさぁ。

 高い所から落ちる的な……じゃなくて、そんなこと言ってる場合じゃなかった。


「コハクは何してるんだい?家の中は?話は終わったの?」


「……まだ。つまんないからミオを見に来たの」


 くっ……ミオか。

 やっぱり、昔みたいに兄ちゃんって呼んでくれないのか。


「その……ミオって止めない?昔みたいに、ミオ兄ちゃんでも……」


 俺の事をお兄ちゃんと呼んでくれなくなって、クソほど悲しい。

 せっかく出来た可愛い妹。なのに、お兄ちゃんって呼ばれないなんて可哀想じゃないか?俺が。


 前世では弟がいたが、可愛いなんて思ったこと無かったからな……生意気で、人を小馬鹿にするような奴だったし。


「やーだよ。ねぇちゃんたちだってミオって呼ぶじゃん。妹が呼び捨てにしちゃだめなの……?」


 駄目だめじゃねぇけども!駄目だめじゃねぇんだけどもぉ!

 あるじゃん!願望がんぼうだよ!お兄ちゃんって呼ばれたいじゃんかぁぁ!!


「だ、駄目だめじゃないけどさ……僕は一応、コハクのお兄ちゃんだし」


「一応ね」


 グサッ――!!

 さ、刺さったぞ……今の言葉、心に刺さった。


「そんなことより、早く魔法使いなよ~」


 そんな事……だと……?

 コハク。お兄ちゃん、ショックだよ。


「……うん。分かった……」


 あきらめないからな。

 絶対に、またお兄ちゃんって呼んで貰うから。


 傷付いた心を切り替えて、俺は木材に【無限まほう】を使う。

 隣の自宅を基準に、床上式……どこぞの高原の別荘のような感じだな。

 でも、土台はこれでいいとしても……コハクの言う二階建てってのも確かに面白いよな。


 だけど、ミーティアとジルさんの二人暮らしなんだろ……?

 あれ……?もしかして、ジェイルもいんの?


 ジルさんの話じゃ、ジェイルは【リューズ騎士団】って訳ではなく、【クロスヴァーデン商会】でやとっていると言うあつかいらしいけど。

 まぁ、だから荷馬車の御車をしていたんだろうけどさ……そう言えば、【リードンセルク王国】の騎士団を辞めた経緯けいいも……気になるよな、王女様の事も気がかりだし。


「……ねぇミオ。可愛いのにしなよ」


 君も言うのかい?そのような事を。

 じゃあ聞くけど、可愛い家ってなんだよマジで。


「はぁ……善処ぜんしょするよ」


「がんばってぇ!――お兄ちゃん・・・・・っ!」


 な――!!……がっ……頑張りまぁぁぁぁす!!


 この時の俺は気付かなかった。

 横でコハクが、クラウ姉さんが悪戯いたずらをするときバリに、顔をニヤニヤさせていた事に……小悪魔だな、俺の妹。

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