3-31【月光狂3】



月光狂ルナティック3◇


 この男が何を言っているのか。意味は分からなかったけれど。

 でも、何となくさっする事は出来た。


 今、ジェイルが言った言葉……アロッサだったっけ?

 それは、力を持つ人間……転生者わたしを指し示す言葉だと。

 その私の考えに答えるように、ジェイルが言葉を続ける。


「……【神の花嫁アロッサ】とは、その名の通り……花嫁、なのだが。花嫁と言っても……中には男もいるのだ」


 はい?男の花嫁?花婿じゃなくて?


「……これは昔からの名残なごりだ。昔は……お前のような特異な力を持つのは女性だけだったんだ。だからアロッサ、花嫁と呼ばれていたのだが……時がつにつれ、力を持つ男も現れ始めた。だから、総称してアロッサと呼ぶようになったと言うだけの事……」


 なるほど……イエシアスから聞いて、他にも転生者がいることは分かってたけど、大昔からそう言った人間はいるという事か……なら、力を持つイコール転生者ってのは違うようね。


 天性の才能……魔法だったり、武力だったり、そう言う力を持った人間を指す言葉……って事ね。


「私がそれだって言いたいの……?」


 まぁ、転生して特別な能力を得ているのだから……言われるのも当然なのかもね。

 でも……ミオは?

 確かに、木を成長させる魔法に、地面を操る魔法。

 それと光をまとう魔法。

 自然に干渉する魔法は、凄いと思う。


 でも、ミオが転生者なら……【女神イエシアス】が何か言っててもおかしくない。

 うそを言えない神でも、誤魔化ごまかすことは出来るから信用は出来ないけど。

 それに、能力は一つの筈……ミオが転生者なら、能力はなに?

 地面、樹、光……すでに三つでしょう?チートと言うほど、そこまで魔法を使ってもいないし、やはり魔法使いの才能……と言った方がしっくりくるのよね。 


「才能のある子供たち……それが、この【女神アイズレーン】の加護のある村に産まれている……これは運命だ」


「運命?」


 ジェイル、あなたは知らないから言えるのよ。

 あのだらしのない女神を見たら……きっとこの世界の人間は幻滅するでしょうね。

 姿は……そう言えば私も見たことは無いけど。


「そんな事はいいから……早く戦わない?」


 そうよ。詮索せんさくされる事も避けたいし……何より魔力が持たないわ。

 ちらりとミオを見れば……多分ジルがジェイルと同じ説明をしているんだ思う。

 そう言えば、ジルにも見せてなかったものね……回復の力。


「しかし……お前のその魔法は――」


 回復魔法を人間が使えないだなんて知らないわよ。

 ゲームとかだと、普通に初めから使えるんじゃないの?


「――いいから。行くわよっ!!」


 考えさせちゃだめだ。詮索せんさくもされたくない。

 だから……斬りかかる!


「――ま、まて!まだ話がっ」


「問答無用っ!!」


 せっかく【クラウソラス】がパワーアップしたのに、それを話だけで終わらせるわけにはいかないでしょ。


「はあっ!!」


 キィィィィィィン――!!


 ジェイルは細い剣で防ぐが、まだ戸惑とまどっているようだった。

 せっかく戦う気を出してくれたのに、悪いわね。


 でも、それなら……もう一度やる気を出させてあげるわ。

 私の……自分自身の実力でっ!!

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