3-30【月光狂2】



月光狂ルナティック2◇


 クラウ姉さんが魔法を使った。

 回復の魔法……久々だな。いったい何年ぶりだったっけ?


 まぁ俺の予想だと……正確には魔法じゃなくて、【クラウソラス】の力だろうなと言うのはあるが、まぁこれも魔法で通せるだろ。

 俺の【無限むげん】は土の魔法、【豊穣ほうじょう】は樹の魔法、【極光きょっこう】は身体強化魔法って事で誤魔化ごまかせてるし。

 多分、似たような魔法があるんじゃないかな?


 クラウ姉さんの腕の傷は、ものの一瞬で回復して……赤い線はもう完全に消えた。

 流石さすが、転生者の能力だよな。


「――お、おい……ミオ」


 はい?ジルさん……?

 なんだ、そんなにおどろいた声で。


「どうかしました?」


「……い、今……クラウは何をした……?薬を使ったの……か?」


 はいぃ?――って!ものすごい顔してる!

 見れば、ジェイルもミーティアも……同じく驚愕きょうがくの顔を浮かべていた。


「――き、傷が、治ったわよね……?」


 なんで?回復魔法って、基本じゃないのか?

 そこまでおどろいている理由が、俺には分からなかった。


「ミオ。クラウのあの魔法は……いったい、いつから使えているんだ?」


 え……っと。いつだったっけ?確か、ガルスが怪我をした時に治したって言ってたから、俺が十歳の時だな。

 だから、クラウ姉さんがこの力を見せたのは。


「え~っと確か、十三歳の時ですかね……四年前です」


「「――!?」」


 え……あれ?

 ミーティア?ジルさん?

 どうして固まっているんだ?


 はっ!!――も、もしかして。

 回復魔法って……この世界だと、物凄く……貴重……なのかぁ!?


「ど、どうしたの?ミーティア……ジルさんも」


 これヤバいやつ?ねぇこれヤバいやつじゃね?

 バレちゃいけないやつ……絶対そうだ!!


「まさか……クラウは、本当に?」


 あ~だめだ。終わった。

 ジルさんは思考タイム。

 ミーティアは、クラウ姉さんをあがめるような目で見てるし……終了ですか?クラウ姉さんの平和なスローライフは。





 傷がえただとっ……!?

 そんな魔法、二百二十二年生きて来て初めて見た……いや、目に出来るものでは無いのだ。


 回復魔法……それは――神の御業みわざなのだから。


「……クラウ、だったな……お前は、本当に人か?」


「――はぁ?人って……当たり前でしょう?ママもパパも、みんな普通の人間よっ」

(私が転生者ってだけで)


 確かに、この村は普通以下の存在だ。

 だが、ミオもそうだ……あんな法則を無視した魔法の数々、誰が思い付くか。


「……そうか、ならばお前は特別だ。クラウ」


「なにがよ?」


「回復の魔法は……神にしか使えん。だから、お前は……神に選ばれしもの……【神の花嫁アロッサ】だ」


「……アロッサ?……なにそれ?」


 クラウは知らないようだ。

 だが、俺には確信がある。

 クラウも、その弟ミオも……神に選ばれた存在だ。

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